ISO 9004:2009:『Managing for the sustained success of an organization -- A quality management approach 』(組織の持続的成功のための運営管理−品質マネジメントアプローチ)規格が2009年10月30日付けで発行されています。
7月31日のFDISの時点では、発行が遅れるかと伝えられていましたが、予定通り10月に発行されました。
JIS規格も国内に発行されるものと考えられます。
組織を長期的な視点から持続的成功に導く手引きという位置づけで作成されたISO9004規格は、昨今の厳しい環境下にある企業にとって有益なツールとなることが期待されます。
ISO9004でもQMSの8原則やプロセスアプローチなどの概念は、引き継がれて中核となっています。
このプロセスアプローチの考え方については、十分に理解し、有効に活用するとなるとなかなか実際には、その種のガイドとなる本なども少なく、難しい面があると思われます。
プロセスアプローチ監査を、メインのテーマとして、プロセスアプローチとはどのようなものか、具体的に何をどうするのがプロセスアプローチなのか、プロセスプローチによる内部監査はどのように行ったら良いかといったプロセスアプローチを組織のQMSに活用して有効性監査を行うための方法など解説している本を紹介します。
シンプルには、有効性とは、計画したことが達成された程度との意味になりますので適合性監査では、規格等の要求事項が監査基準となるのに対して、有効性監査では、計画が基準ということになります。
プロセスで計画したことが達成されているかを検証するのが有効性監査ということになります。
特にプロセスで計画している目標の達成に照準を当てるのが本書のプロセスアプローチ監査ということになります。
<<ポイント>>
プロセスアプローチ技法を適用した有効性監査の解説書。
本書では、
プロセスアプローチとは何かとの確認にはじまり、
ISO9001の内部監査に照準を当てて解説し、
さらに有効性の監査が求められる背景や
適合性の監査と有効性の監査の違い、
またプロセスアプローチ監査における
指摘事項の検出と効果的な是正処置の方法と事例。
内部監査員、認証機関の審査員に求められる力量、
認証機関の審査・認証のプロセスの概要。
更には、内部監査手順書、チェックリストの例など
図解を交えて、プロセスアプローチ監査の技法について解説しています。
本書:「図解ISO9000プロセスアプローチ内部監査」です。
「パフォーマンス改善のための効果的な監査の進め方」との副題が付いています。
本書は、著者:岩波 好夫氏にて、2009年10月に日科技連出版社より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の意図について、筆者は、「まえがき」で以下のように述べています。
「本書は、品質マネジメントシステムのプロセスアプローチ、適合性の監査と有効性の監査の相違、プロセス監査とプロセスアプローチ監査の相違、およびプロセスアプローチ監査手法について、具体的にわかりやすく、かつ詳しく説明した、プロセスアプローチ監査の決定版です。
本書では、『プロセスアプローチ』とは何か。
どのようにすればよいのか。
内部監査を効果的に行うにはどうすればよいか。
プロセスアプローチ監査は、どのように行えばよいのか”などについて、本書では図解によりわかりやすく解説しています。
本書ではまた、内部監査における、効果的な指摘の方法と是正処置の例、有効性の監査チェックリストの例、および内部監査規定の例を紹介し、読者の皆さんが自社の内部監査にすぐに活用できる内容となっています。」
本書は、7章から構成されています。
本書をぱらぱらとめくってみると目につくのは、さすがに図解と銘打っていることもあって図表が多数挿入されていること。
フロー図、概念図、タートル図などの例示をはじめとして、プロセスアプローチという概念的に分かり難いテーマに対して入門者の方にも配慮された丁寧で実務的な内容になっています。
とくに各種の具体的な内部監査に関する各種の帳票についての記録事例が多数掲載されていて具体的に学ぶことができるように工夫されています。
またISO9001で手順の文書化が要求されている内部監査手順を規定した内部監査規定とISO9001(JISQ9001:2008)規格の適合性と有効性とを取り上げたチェックリストの例も含まれています。
また本書の付録として、『用語の解説』が添付されています。
ISO9000の用語の定義を引用したという以上に、さらにかみ砕いて解説している構成になっています。
本書のざっとした概要を紹介します。
「ISO 9000とプロセスアプローチ」に関して、ISO9000の目的について、ISO900ファミリ規格の紹介とISO9001規格の目的の確認から始まります。
適合性、有効性とパフォーマンスとの言葉を考察し、それぞれの改善とはどのようなことかを確認し、またISO9001の要求事項のつながりとQMSにおけるプロセスアプローチの用語の定義からプロセスアプローチとはどのようなものか、さらにプロセスアプローチによるQMSの有効性の改善の考え方、さらには、プロセスフロー図、プロセス分析図によるプロセスの分析といった事項を解説しています。
通常の解説書では、ともするとこういった基本的事項の説明は、冗長なものになりがちですが、端的にポイントをズバリとまとめているので分かり易く取っ付きやすい展開になっています。
次いで、内部監査の概要の解説については、ISO9001の8.2.2項の要求事項とISO19011の指針規格を要所で参照しながら時系列的に内部監査の手順を[ISO19011規格の要旨]→[内部監査のポイント]→[内部監査における実施例]といったスタイルに沿った解説となっています。
また適合性の監査と有効性の監査について、なぜ有効性が求められるか、プロセスアプローチ監査の手順、プロセス監査とプロセスアプローチ監査の違い、有効性の確認に関してチェックリストの例など交えての要求事項別の確認とプロセスアプローチに基づく確認、さらにはQMSの8原則といった内容の解説となっています。
そして、不適合等の指摘事項の区分から適合性の監査の場合とプロセスアプローチの場合のそれぞれついての内部監査報告書と是正処置要求書の具体事例を取り上げながらの効果的な是正処置の方法について解説しています。
また内部監査員、審査員に求められる力量、知識・技能とその継続的な向上とに関してISO19011を参照しながら解説、また認証機関の審査・認証プロセスについて、ISO/IEC 17021を参照しながら解説しています。
ASRP(Advanced Surveillance and Reassesment Procedures:先進的サーベイランス・再認証手順)と内部監査との関係についても解説しています。
さらに内部監査規定と適合性確認と有効性確認のための監査チェックリストが掲載されています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、QMSのなかなか難しい概念でもあるプロセスアプローチについてその基本の解説からはじまり、とくに組織のパフォーマンスを有効に改善するための効果的な内部監査をプロセスアプローチの観点からどのようにおこなったらよいかを図解で分かり易く解説しています。
さらには、効果的な内部監査を行うための、監査手順、指摘の方法から監査所見、監査報告書、是正処置要求書報告書、内部監査規定とチェックリストの例などを交えてプロセスアプローチによる内部監査の詳細を解説しています。
筆者のプロセスアプローチをテーマにした以下の関連書籍も参考にして頂ければより理解が深まります。
<<まとめ>>
ISO9001の内部監査員の方から経営により寄与できるQMSへとパフォーマンスを改善させたいと考えておられる関係者には、本書は、是非、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 ISO 9000とプロセスアプローチ
第2章 ISO 9001の内部監査
第3章 適合性の監査と有効性の監査
第4章 内部監査における効果的な指摘と是正処置
第5章 内部監査員の力量と継続的向上
第6章 認証機関の審査・認証プロセス
第7章 内部監査規定と監査チェックリスト
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