現況の不況下においても躍進を続けている株式会社武蔵野。
この会社を増収増益の強い体質の企業に育てあげ、現在では300社以上に経営指導しているカリスマ経営者の小山 昇氏が、『経営の見える化』をテーマにこれまでの経営ノウハウをまとめて説いている本を紹介します。
筆者の小山 昇氏は、株式会社武蔵野が増収増益を実現できた原動力となったのは、『経営の見える化』を実践してきたためとし、「見える化」について本書の「はじめに」で、以下のように述べています。
「すべてオープンにする」といっても、結果を表示しているだけでは「見える化」とはいえません。
それは、「見える化」ではなく、「見せる化」です。
なぜなら、「見える化」とは、結果だけでなく、「結果に至るまでのプロセスが含まれているもの」だからです。
(略)
ではなぜ、プロセスを見せる必要があるのでしょうか?
それは、プロセスがわからなければ、次のアクションを起こせないからです。
(略)
会社の経営も、クルマの運転も同じです。
世の中の出来事は、いきなり「青」から「赤」に変わるのではなく、その間に「黄色」があります。
「黄色」というプロセスがあるから、いち早く次のアクションを起こすことができる。
プロセスが見えるからこそ、人は「やらなければならない」気持ちになる。
本書には「武蔵野」が取り組んできた「見える化」に取り組むための仕組みを収めています。
「自分の会社のことがわかっていない」、「経営方針が決められない」、「社員の気持ちがわからない」、「数字が読めない」など、「自社の現状が見えていない中小企業」のお役に立てることを願っています。
<<ポイント>>
不況下でも増収増益を続ける「株式会社武蔵野」の『経営の見える化』のための取り組みを公開している本。
本書では、
経営の見える化は、以下の3つのポイントが基本とした上で、
- 「人間心理」に基づく経営のやり方
- 強制的に行動させる仕組みをつくる
- そのしくみをつくった理由を明確にする
以下の6つの軸から経営の見える化のエッセンスを説いています。
- 「社長の思い」
- 「お金の流れ」
- 「儲かっているかどうか」
- 「現場の仕事」
- 「情報」
- 「評価」
『「見える化」とは、プロセスを見せること』とお金の流れ、儲かっているかどうか、現場で何が起きているか…。
会社の動きがよくわかる、「経営の見える化」を説いています。
本書:「経営の見える化」です。
本書は、著者:小山 昇氏にて、2009年9月に中経出版より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の表紙カバーの下部ならびに折り返し部には、以下のように書かれています。
9割の社長・幹部は自分の会社のことを何も知らない会社の動きがトコトンわかる!
お金の流れ
儲かっているかどうか
現場でなにが起きているか…300社が導入
社長は、会社の「異常」をいち早く察知するために
「数字」をつぶさに見ていく必要があります。
ですが、ある時点の数字だけ見て
「異常かどうか」を判断することはできません。
そこで「売上」「粗利益」「営業利益」を
毎月「年計」で見ていくと早期発見につながります。私が社長になったばかりのころの「武蔵野」は、
正真正銘の「落ちこぼれ集団」だった。
それなりの人材しか集まらなかった中小企業が
大きく儲かるビジネスモデルを構築した。
その原動力が、本書で紹介する「経営の見える化」だった。
本書は、テーマとなっている「社長の思い」「お金の流れ」「儲かっているかどうか」「現場の仕事」「情報」「評価」という6つの「見える化」を取り上げた6章から構成されています。
イラストなどの多数の図表が挿入されていて本書の解説は、筆者のこれまでの書籍以上に読者への見える化の面も配慮されて分かり易い内容となっています。
また各章の終わりには、その「章のまとめ」が箇条書きで掲載されていてその章の内容をレビューできるように構成されています。
以降、章を追って概要を紹介します。
第1章では、「「社長の思い」の見える化」
と題して、株式会社武蔵野の経営計画書など「社長の思い」に関わる見える化の仕組みや活動の実態の解説からはじまります。
野球を見て楽しめるのは、「ルール」「スコアボード」「道具」が揃っているからであると説き、同社では、それぞれに対応して、経営計画書(会社の規則・規定・方針など)や目指すべき明確な数字(事業構想、経営目標、利益計画など)を一冊の手帳に道具としてまとめ全社員がもって共有化を図っているとのことでそのことの意義と重要性を説いています。
『経営計画発表会/お客様とライバル/自社の実力/やらないこと/一冊の手帳/責任の所在/早期勉強会/業界の非常識/定期飲み会』といった「社長の思い」に関わる「見える化」を説いています。
第2章では、「「お金の流れ」の見える化」
と題して、会社の経営実態を把握することに関わる「社長の通信簿」といえる決算書の財務3表などのお金にまつわる見える化の方法を説いています。
『BS/「売上」「粗利益」「営業利益」を毎月「年計」で見て異常の兆候を把握する年計グラフによる数字の変化/粗利益の額/回収サイト/在庫(棚卸資金)/社員の経費/部門毎のお金の流れ/経営の不正』といった事柄についての見える化の工夫や着眼点について解説しています。
第3章では、「「儲かっているかどうか」の見える化」
と題して、ものが売れたときに「なぜ売れたのか」を見える化し、その中の重要成功要因を見極めることが重要とし、数字の中の結果から、原因を追求する姿勢が経営を正しい方向に導くと説いています。
またマーケットの見方について、平均値でなく、最も多く分布している最頻値でみることや、儲けは率でなく額で見える化すること、自社に最も影響を与える先行指標を把握すること、未来から逆算して今を決めるといった視点、さらには、新規事業を3年間段階的に評価するなど「撤退タイミング」を見える化する、攻めの経営と守りの経営の使い分けといった工夫などを説いています。
第4章では、「「現場の仕事」の見える化」
と題して、年に1回、社員、アルバイト、パートを5組に分け、全営業所を視察し、「武蔵野がどのように変わってきたのか」「どのような取り組みをして、どのよう成果を上げてきたのか」を全員で視察し、気づきを50個書くと言ったことの実施など含む「バスウオッチング」を紹介するなど、「現場の仕事」の見える化のための仕掛けについて解説しています。
ユニークな『良いことをパクって見える化』するというプライドの邪魔を取り除く施策では、実に割り切った以下のようなことを実施して会社が変わったとのこと。
- 何かを考えて実行すると、賞与を半分にする
- 同僚の真似をして成果を出すと、賞与を倍にする
またインプットはデジタルで、アウトプットはアナログでという『社員の頑張りの見える化』施策や「現場百回帳」、ダブルキャスト(同じ役をこなせる人を2人以上用意する)で社員の層を厚く、人事異動の繰り返しでマニュアルをつくる、4週間1サイクルの仕事の単位といったユニークな現場の活性化の仕掛けを解説しています。
第5章では、「「情報」の見える化」
と題して、人は小さなことをたくさん褒められるとやる気が出るとし、感謝の気持ちを見える化して伝えるしくみの「サンクスカード」などのツールによる「情報」の見える化の方法を解説しています。
またクレームの見える化(全員でクレームを共有化し、クレーム隠しは賞与半減)、クレーム処理をするまで自動的にメールが送り続けられる仕組み、個人個人にデスクを持たせず「情報の私物化」を見える化するをはじめ、職責下位から報告し、社長が最後の5分だけ話すといった「会議の進め方」、「部下の指導」、「実行計画」といった面での見える化の工夫について解説しています。
第6章では、「「評価」の見える化」
と題して、給与・賞与の基準の見える化の考え方について、基本給は年功序列、賞与は半期毎の成果が正しいといった事項を取り上げ解説しています。
また実名で賞与の額の公開、賞与の現金手渡し、課長職以上の投票で決まるといった「社内の序列」の見える化、「今までの自分と現在の自分の見える化が成長を促す」、「信賞必罰のルール」と「社員の持ち家精度で貸し付けるのではなくあげてしまう」といったユニークな「評価」の見える化による社員のモチベーションアップの見える化を説いています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、不況下においても躍進を続ける「株式会社武蔵野」の経営の見える化手法について公開しています。
お金の流れ、儲かっているかどうか、現場で何が起きているか、社員のモチベーションを向上させる、……といったユニークで説得力ある経営の見える化の具体的なノウハウとこのような全てを透明化することで経営は、人はどう変わるかについて、逞しく大胆な実例を交えて説いています。
株式会社武蔵野で実行して成果が挙がったことだけに迫力があり説得力があります。
<<まとめ>>
本書は、中小企業の経営者や幹部の方々には、おすすめの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 「社長の思い」の見える化
1.「経営計画書」を見える化する
2.「経営計画発表会」で見える化する
…
10.定期飲み会で見える化する
第2章 「お金の流れ」の見える化
1.決算書で「社長の成績」を見える化する
2.「バランスシート」を見える化する
…
9.「経理の不正」を見える化する
第3章 「儲かっているかどうか」の見える化
1.重要成功要因で「売れる理由」を見える化する
2.最頻値で「マーケット」を見える化する
…
6.新規事業の「撤退タイミング」を見える化する
第4章 「現場の仕事」の見える化
1.バスウオッチングで見える化する
2.良いことをパクって見える化する
…
6.週単位スケジュールで見える化する
第5章 「情報」の見える化
1.サンクスカードで「コミュニケーション」を見える化する
2.事を大きくして「クレーム」を見える化する
…
6.「実行計画」を見える化する
第6章 「評価」の見える化
1.「給与・賞与の基準」を見える化する
2.賞与の現金手渡しで、「やる気」を見える化する
…
5.「信賞必罰のルール」を見える化する
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