高濃度の放射能の汚染水を一時保管するタンクを確保とのことから苦渋の決断とのことで集中環境施設プロセス建屋内の低レベルとされる約10,000tの滞留水と5号機と6号機サブドレンピットにある低レベルの線量とされる約1,500tの地下水が海へ放出された。
放射性廃棄物は、ロンドン条約の海洋投棄の禁止物質ということになるが、今回の処置が高濃度の汚染水を回収するための緊急処置になることを事後になったとしても国の信用に関わる問題なので関連諸国へ十分に説明することが必要。
しかし低レベルとされる約11,500トンに及ぶ放出水の核種とどの放射能レベルにあるかとの詳細数値(何がどれだけ出されたのか)は、公表されていない。
原子力・保安院の発表によると高濃度の放射性汚染水が流れ出ている2号機の取水口付近で2日に採取した海水からは、法定濃度限度の750万倍の放射性ヨウ素131が検出されているとのこと。
海水の分析は、500mlのサンプルを採取し、福島第2原発に持ち込みゲルマニウム半導体検出器で測定しているとのことだが、セシウムとヨウ素の値だけでそれ以外にどのような核種がどのレベル含まれているかのデータも公表されていない。
このような不十分な情報開示が風評被害を生む一要因にもなっているのでは。
ピット付近から海へ流れ出ている汚染水の水量は、毎秒3リットルレベルとのことで毎時約11トンのレベルになる。
圧力容器の容量が、1号機が約200トン、2、3号機が約330トンとのこと。
原子炉の安定化に向けて水の注入を継続する必要があるが、注入量を増加させると汚染水が増加するという難しい二律背反の状態。
冷却のための注水量を減らしてきており、たしか現状の注水量は、1、2、3号機を併せて毎時約20トンレベルとか言われていたので途中に滞留することがあったとしても注入している水の約半分程度が海へ流出しているという状態になっているのではと思われる。
圧力容器の配管等の破損部分から流出しているとすれば、汚染水が海へ落下している箇所と配管等の破損部分から漏れた溜まり水の間で高低差による圧力差がかなりあるのではないかと思われる。
想像するに2,3号機では、圧力容器に注入された水の流出は、冷却に寄与した水蒸気または、水としてかなりの部分が漏れて、格納容器で回収できた水蒸気を除いて格納容器の漏れ箇所から注水量の約1/2が漏れ流出しているような厳しい状態なのだろうか。
回収できなかった残りの1/2程度の部分が水蒸気として気相に逃げているというイメージか。
このような水の収支の状況は、「すでに炉心溶融が起こってしまっていた」とする大前研一氏の見解とも合致しているように思う。
非常用炉心冷却装置(ECCS)の一部復旧とかはとても見通しが立たない状況で、外部電源と外部冷却系での循環系による冷却系へとシフトするとの判断も遅れたのではと思われる。
その準備は、進められているのかも知れないが。
読売オンラインのニュースによると放射性物質の海での拡散について仏国立科学研究センターがシミュレーションのデータを公開していると報道している。
これによると放射性物質の海での拡散は、方向によって大きな差があり、最初は沿岸を南北に広がり、東西にはすぐに広がらないといった計算になるようだ。
あくまで実測のデータで実証することが必要だが、こういったシミュレーションは有力な判断材料になる。
またヨーロッパでは、気象情報と併せて福島第1原発からの大気層での拡散が毎日どのような状態となるかのシミュレーションの計算が公開されている。 (ドイツ気象庁の拡散シミュレーション)
チェルノブイリの事故の際の放射能の拡散を評価する目的で開発されたもの。
これはあくまで計算でシミュレーションしたデータで各地で実際に放射能量を計測した生のデータが基本であることは変わらない。
放射性物質が上空までふき上がられるようなことがなければ関係が少ないかと思われる。
放射性物質が上空に吹き上げられるような場合のマクロな放射性物質の分布状態が上空の気流の流れと関連づけて可視化できる。
ところで汚染水の海水への流出の対策として、水ガラスを採石層の固化剤として注入することが実行されるようだ。
水ガラスは、確かに岩石のような金属酸化物のセラミックスを硬化することはできるが、反応し固化するのに1時間程度の時間が必要でまたチキソ性を持つ(すなわち、流動した状態だと粘性が低下する)ので採石層での固化によるせき止られる見通しは少ないように思われる。(この汚染水の流出は、首尾良くせき止めされたようだ。)
また汚染水の流れの駆動力になっている圧力差が大きいように思われるので仮に下の採石層がうまく固化できて閉じられたとしてもその上方の空間が密閉されている状態ではなく解放された状態なので汚染水は、別の場所に逃げてしまうだけと思われる。
固化させて止めた結果、汚染水が周辺にあふれ出すことになると線量が高くて周辺での作業が困難になってしまう恐れがある。
集中環境施設プロセス建屋等への汚染水の適切な保管場所への移動が急がれる。
これまでのところ、汚染水の海水への流出防止について見通しの立った余り良いアイデアがでていないように見える。
汚染水の流出防止策が手詰まりのように見えるのは、東京電力の現場任せで専門家の関与が少ないのではないか。
現場が出して来たアイデアにその他の人たちが単に乗っかっているだけでは。
途中でトレンチなどからポンプで吸引して汚染水をバイパスさせてタンクに導くなどしてまず海へ流出する流量を減らしさらに矢板でせき止めるなどした上でないと水をせき止めるのは先ず難しいと思われる。
もしこの汚染水の排出状態が6ヶ月続けば、43,200トンといったレベルになる。
トレンチ等にすでに溜まった汚染水が約6万トンとのことで10万トン強の高放射能を示す汚染水の保管容器が必要なことになる。
メガフロート等を含めそれだけのタンクの確保が必要になる。
汚染水をタンクにバイパスさせることが待ったなしの状況。
このような難しいときこそリーダーがその力を発揮するときだが。