エコ・リテラシーを高めるための基本となる地球環境とエコロジーの入門書となる本書の筆者:吉村 忠与志氏は、本書の「はじめに」で産業革命以来の近代文明の歩みと昨今の地球環境保護の動向などを総括し、以下のように述べています。
「経済発展を優先することから一歩譲って経済的に貧しくとも地球環境に負荷をかけない清貧で健康な生活を満足する社会を目指すのはいかがでしょうか。
暖を取るためのエネルギー源は自給自足のバイオマスに求め、石油などの地下燃料からエネルギーの脱却こそ、二酸化炭素の排出量の規制につながる。
脱地下燃料による科学技術の発展を目指し、自然との共生の中に人類の住処を見つける考えが重要であり、人間のエゴをいつまでも引きずることがあってはならない。
地球のバイオリスムを理解し、自然に生かされる人間社会こそがユートピアである。
(略)
物を無駄にせず、捨てるという消費思想を止めて、これまでのライフスタイルを変更することが重要である。
元来、日本文化には鎮守の杜(もり)を大切にする自然への畏敬の念がある。(略)
自然を大切にする持続可能な技術を開発して、世界のリーダーシップを取ることを願いたい。経済大国を維持するための競争から降りてでも、地球温暖化を防止するための技術開発に賛同すべきである。
この地球環境の仕組みを理解し、それを持続可能とするために活動しようとする方々に、本書の内容が一人ひとりの行動の起爆剤になれればと執筆した。」
<<ポイント>>
地球環境とエコの基本を解説する入門書。
本書では、
- 惑星としての地球の経緯と今後の展望
- 地球における生態系のメカニズム
- 科学技術の進歩と農薬/フロン/プラスチックの功罪
- 大量消費社会の循環型社会への転換
- 世界の適正人口と環境許容量の限界
- 人間以外の生物との共生
- バイオ燃料と食糧の競合問題
など地球環境とエコに関わる幅広い知見について豊富な図表とイラストで平易に解説しています。
本書:「よくわかる最新地球環境とエコの基本」です。
「エコ・リテラシーを高める第一歩! 」との副題が付いています。
本書は、著者:吉村 忠与志氏にて、2009年8月に秀和システムより、「How-nual図解入門Visual Guide Book」の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の表紙カバーの下部には、以下のように書かれています。
生物共生とは?地球温暖化を克服する地球に負荷をかけない技術開発!
地球環境の今と未来を知る!
- 地球という惑星
- 生物共生に適した地球環境
- 科学技術の功罪
- 消費文化社会
- 世界人口の増大
- 地球温暖化
- 生物体系から学ぶ
- 食糧の競合
- 人間は生き残れるのか
本書は、9つの章から構成されています。
また章の下位になる節のテーマについて、タイトルに続き数行程度でのその節の要約文が配されまとめられているという構成になっています。
緑黒の二色刷による多数のイラストをはじめ、グラフや概念図などの図表が挿入されており、分かり易い解説となっています。
また途中には、「COLUMN」欄が設けられ、ここでは、『アイスボール』、『森の緑が水道水を守る』といったキーワードの解説や関連するトピックスが取り上げられ解説されています。
以下で章を追ってその概要を紹介します。
第1章では、「地球という惑星」
と題して、この地球の経緯を振り返り、今日の状況と今後について展望しています。
太陽の構造にはじまり、地球の歴史を7大事件と共に振り返り、プレートテクトニクスに関わるプレート移動と人の移動、原始地球から今日までの地球環境の創世(原始地球の大気、オゾン層の生成)、地球と月との関わりといった事項を概観しています。
第2章では、「生物共生に適した地球環境」
と題して、地球での生態系のメカニズムについて解説し、地球と生き物との関わりを大気圏、地圏、水圏の無機的な地球システムに生物圏を組み込んでの平均気温15℃に適応し生息する生物全ての共生バランスについて説いています。
三態圏(大気圏、地圏、水圏)との生物圏との関わり、大気圏(気象の主役、台風)、地圏(土壌の構成、土壌微生物による分解)、水圏(水の循環、海水の循環、日本海と太平洋)、生物圏(生態系のピラミッド、屋敷林)といった観点から地球環境における生物の共生の関わりについて解説しています。
第3章では、「科学技術の功罪」
と題して、科学技術が豊かで快適な人間社会をつくりあげるのに貢献したが、一方、地球環境には悪影響を及ぼすという結果となったことの功罪について農薬、フロン、プラスチック、その他の化学物質を例に取り上げ、そのもたらした功罪について考察しています。
食糧と農薬について、農薬の歴史、農薬汚染と生物濃縮、農水産業と農薬について総括し、また遺伝子組み換え作物について考察しています。
さらにフロンの効用とオゾンホール、プラスチックとリサイクル、生分解性プラスチックの話題、更には、ライフサイクルアセスメントの考え方を取り上げ解説し、VOCと地下水汚染、シックハウス症候群室内空気汚染といった事象を取り上げ、化学物質による環境影響について概観しています。
第4章では、「消費文化社会」
と題して、産業革命井子の大量生産・大量消費・大量廃棄の消費文化社会の課題を総括し循環型社会に向けての転換の方法について提示しています。
大量消費と廃棄の問題について、消費型社会の限界を理解し、循環型社会への移行の必要性を説き、、ダイオキシン問題の展望、ゴミの排出に関してのゴミを分別して資源化するシステムの必要性を説き、リサイクルできる文化経済への移行の必要性、また行き過ぎた消費・浪費についての補修の必要性等を説いています。
第5章では、「世界人口の増大」
と題して、世界の人口増加の問題に関わる環境許容量との関わりについて考察しています。
現在地球の人口は68億人を超え、既に適性人口の50億人を超えていることに注意を喚起しています。
また人間の経済活動が地球環境に対してどのくらい環境負担をかけているかをチェックする指標の「エコロジカル・フットプリント」(EF:生態学的足跡)を取り上げ、日本は2001年のデータで環境収容力をサイズ的に2.39倍に膨れあがっていること、
そして、輸入相手国からの食糧輸入量と距離を掛け合わせた環境負荷の評価指標でもある「フード・マイレージ」についての我が国の実態、
また森林の減少、黄河の断流、アラル海の崩壊といった自然生態の変化、さらに人口のコントロールの論文の「共有地の悲劇」の結論を引用し、一刻も早い人口の増大抑制による世界的調整が必要と論じています。
第6章では、「地球温暖化」
と題して、地球温暖化について、大気温度(気温の変化と北極とキリマンジャロ山の氷の減少)、温室効果ガス、温暖化の現状(温暖化の仕組み、経済成長と二酸化炭素の排出量、燃料別の二酸化炭素排出量、森林と木材自給率)、環境異変の実態、地球サミットと京都議定書を守れるかといった事項を取り上げ解説しています。
第7章では、「生物体系から学ぶ」
と題して、地球上で何億年も生き抜いてきた生物体系に学び、地球生物との共生の在り方について論じています。
ハイブリッドイグアナの地球環境への適用の変化、恐竜の絶滅、自然と生体に学ぶバイオミミクリー(生物(bios)と模倣(mimesis)から生まれた生物擬態)をキーテクノロジーとした科学技術の展開をキーワードにして、太陽エネルギー、アルコール発酵、自然をまねる、自然農法について論じています。
更には、生物多様性の恩恵(生物多様性の価値、生物多様性条約)、自然への畏敬の念(自然への畏敬、日本古来の伝統)、地球生物との共生のあり方(環境保全の理念、輸入食糧依存からの脱皮、自然との共生・協働農業)といったテーマを取り上げ論じています。
第8章では、「食糧との競合」
と題して、原油価格の高騰と共に注目されるようになったバイオ燃料と食糧問題との関わりを論じ、エネルギー源を求める観点からは、食糧との競合にならないものか、ほぼ未利用のバイオマスを対象に考えることの必要性を説いています。
天然林伐採と森林減少(森林の減少と森林の崩壊)、食糧と燃料の切り分け(食糧と燃料の切り分け、バイオ燃料問題)、食糧の自給自足(仮想水、食料の自給率、自給率の向上策)、化石燃料のカーボン管理(カーボン・ニュートラル、二酸化炭素の排出権)、バイオマスのエネルギー(バイオマス、植林の意義、バイオマスのエネルギー、エネルギーの地産地消)といった事項を取り上げ解説しています。
第9章では、「人間は生き残れるのか」
と題して、人間は科学技術という武器により地球環境に借りを作りすぎたとし、人間社会はこの地球を一次借用していただけであって、この資源を残し次世代に受け継ぐべきとし、地球の環境と資源を持続可能にすることが、人間が地上に生かされる要因と説いています。
地球的視点とは(地球にやさしいものづくり、省エネルギー問題、省資源問題、リサイクル問題、環境汚染の防止と修復)、そして、化石資源に頼らぬ科学技術の開発(日本低炭素社会シナリオ、バックキャストモデル)、また持続可能な発想の転換(三すくみ問題、地産地消の運動、ファクターX)、地球システムの中のヒトを自覚できるか(分散型エネルギーの確保、脱化石燃料消費、持続可能な循環型社会、自然中心への転換)といった観点からこれからの持続可能な地球環境の要件について考察しています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、地球環境の現状と将来について、地球という惑星の生い立ちからはじまり、生物共生に適した地球環境や、科学技術の功罪、消費文化社会、世界人口の増大、地球温暖化、食糧との競合などにの現状と課題を概観した上で、人間は生き残れるのか、そのために一人ひとりが持つべきエコリテラシーを問いかけています。
本書では、地球環境について知っておくべきエコ知識を豊富なイラスト等の図表を交えて科学的な視点からわかりやすく解説しています。
<<まとめ>>
地球環境とエコの基本を総括的に学びたい人には、本書は、お薦めの一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 地球という惑星
1-1 太陽系と地球
1-2 プレートの移動と大陸形成
1-3 地球環境の創生
1-4 地球と月
第2章 生物共生に適した地球環境
2-1 生態系のメカニズム
2-2 大気圏
2-3 地圏
2-4 水圏
2-5 生物圏
第3章 科学技術の功罪
3-1 食糧と農薬
3-2 フロン
3-3 プラスチック
3-4 その他の化学物質
第4章 消費文化社会
4-1 大量消費と廃棄
4-2 ダイオキシン問題
4-3 ゴミを出す消費文化
4-4 リサイクルできない文化経済
4-5 経済成長の代価
第5章 世界人口の増大
5-1 世界の適正人口
5-2 エコロジカル・フットプリント
5-3 地球環境許容量の限界
5-4 消えていく自然生態
5-5 共有地の悲劇
第6章 地球温暖化
6-1 地球の大気温度
6-2 温室効果ガス
6-3 温暖化の現状
6-4 環境異変の実態
6-5 京都議定書を守れるか
第7章 生物体系から学ぶ
7-1 地球環境への適応
7-2 バイオミミクリー(生物擬態)
7-3 生物多様性の恩恵
7-4 自然への畏敬の念
7-5 地球生物との共生のあり方
第8章 食糧との競合
8-1 天然林伐採と森林減少
8-2 食糧と燃料の切り分け
8-3 食糧の自給自足
8-4 化石燃料のカーボン管理
8-5 バイオマスのエネルギー
第9章 人間は生き残れるのか
9-1 地球的視点とは
9-2 化石資源に頼らぬ科学技術の開発
9-3 持続可能な発想の転換
9-4 地球システムの中のヒトを自覚できるか
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