苦情対応マネジメントシステムのガイドラインを提供する国際規格であるISO 10002:2004:「Quality management−Customer satisfaction−Guidelines for complaints handling in organizations」、(JIS Q 10002:2005:「品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針」)がターゲットとする範囲に関して、「1.適用範囲」において以下のように規定されています。
この規格は、組織内部における製品に関連する苦情対応プロセスについての指針を規定する。
この規格は、プロセスの計画、設計、実施、維持及び改善を含む。(略)
この規格は、あらゆる規模及び業種の組織で使用されることを意図している。(略)
この規格は、苦情対応の次のような側面を扱っている。
- フィードバック(苦情を含む)を積極的に受け入れる顧客重視の風土をつくり、受け取った様々な苦情を解決し、組織が製品及び顧客サービスを改善する能力を高めることによって、顧客満足を高める。
- 要員の教育・訓練を含む経営資源の十分な確保と活用についてのトップマネジメントの関与及びコミットメント。
- 苦情申出者のニーズと期待とを認識し、対応する。
- 苦情申出者に対して、公開され、効果的で、利用しやすい苦情受付方法を設ける。
- 製品及び顧客サービスの品質を改善するために、苦情を分析し、評価する。
- 苦情対応プロセスの監査を行う。
- 苦情対応プロセスの有効性及び効率についてレビューを行う。
この規格は、適用される法令又は法規制で求められている、いかなる権利又は義務を変えることを意図したものではない。
このISO 10002:2004のIDT(一致している。なお、この対応の程度を表す記号は、ISO/IEC Guide 21 に基づき、IDT(一致している)、MOD(修正している)、NEQ(同等でない)で示される)規格であるJIS Q 10002:2005 規格(「品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針」)について、この規格の活用普及の観点から、その全体像と背景、概要、自己適合宣言に関わる規格適合性のガイドラインを、先進企業の事例とともに解説している本を紹介します。
本書は、JIS Q 10002:2005 の規格の作成に参画した社団法人 消費者関連専門家会議ACAP研究会 」消費者関連JIS研究会」の編集・執筆になりますが、本書の「はじめに」で執筆者を代表して柴田 純男氏が『JIS Q 10002 規格は体系付けられた苦情対応を行うことで、顧客の信頼を高め、組織の能力を高め。社内体制を強化する標準で国際的にも普遍的である』とした上で、本書について以下のように述べています。
「今回、この本をACAP研究所が執筆するにあたり、この規格の普及に関する問題点がいくつか出てきた。
「膨大な経費がかかるのではないか」
「内容的に分かり難い」
「どこまでできれば宣言できるのか」
などである。ACAP研究所は、これらの疑問に答え、JIS Q 10002 の普及を図る目的で、本書を執筆した。
本書は、JIS Q 10002 の全体像、その特徴を示し、規格項目に自社の規格が合致しているかどうかを検証するガイドラインを示した。
またACAPが実施したJIS Q 10002 社内構築実践講座や内部監査員養成講座などの講習会でよく質問される事項に関するQ&Aを載せ、更に既に自己適合宣言を表明した企業による座談会録も載せた。
この本がガイドラインとして、これからこの規格を導入しようとする企業にとって具体的で分かりやすくその体制づくりや自主適合宣言実施に寄与するものと信じている。」
<<ポイント>>
JIS Q 10002:2005 規格に基づく苦情対応マネジメントシステムの構築から自主適合宣言までのガイドラインを提供する本。
本書では、
社団法人 消費者関連専門家会議ACAP研究会 「消費者関連JIS研究会」の執筆者が
JIS Q 10002:2005 規格の全体像とその背景の解説にはじまり、
JIS Q 10002 の概要、規格適合性のガイドライン、JIS Q 10002 に関するQ&A
そして海外でのISO 10002 規格の普及状況、
自己適合宣言企業の事例までを解説しています。
本書:「ISO 10002:2004/JIS Q 10002:2005 苦情対応マネジメントシステム構築のためのガイドライン」です。
「やさしい構築手順と自己適合宣言の事例」との副題が付いています。
本書は、消費者関連専門家会議ACAP研究所「消費者関連JIS研究会」の編集にて、2009年9月に日本規格協会より、「Management System ISO SERIES」の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
いまこそ、
「自己適合宣言」を!
規格を読みこなし、
先進企業の事例を参考に、
御社での取り組みに役立つ1冊。
本書は、6章から構成されています。
ISO/IEC Guide 21に関する「ISOとJIS同等性」といった5件のコラム苦情処理のマネジメントシステムに関する話題が途中に挿入されています。
また概念図などの図表も挿入され分かり易い解説となっています。
それでは、章を追って概要を紹介します。
第1章では、「JIS Q 10002の全体像とその背景」
と題して、JIS Q 10002 規格の概要、この規格は何を意図して作成されたかとの目的、日本企業での消費者対応部門の位置づけと現状を概観しています。
次いで、JIS Q 10002 規格がマネジメントシステム規格として作成されていることの意味とそれをしっかりと把握しておくことの重要性とJIS Q 10002 を進める上での要員配置、要員の教育、経営資源の配分、社内の位置づけ、責任者といった重要な施策を解説しています。
また「JIS Q 10002 の特徴」について以下の4点を特徴とまとめています。
- トップマネジメントのコミットメント
- PDCAサイクルの重視
- マネジメントレビューの重視
- 規格への適合は自己適合宣言である
さらにJIS Q 10002の自己適合宣言を行うことによる企業、経営者、消費者のそれぞれのメリットと JIS Q 10002 が第三者認証型でない理由を考察し、苦情対応プロセスをどのような手順で導入すればよいかを例をあげて解説しています。
第2章では、「JIS Q 10002の概要」
と題して、JIS Q 10002の規格の構成内容の概要と「4.基本原則」、「5.苦情対応の枠組み」、「6.計画及び設計」、「7.苦情対応プロセスの実施」、「8.維持及び改善」の箇条の大略とP(6)D(7)C(8)A(8)サイクルの仕組みとの関連について解説しています。
第3章では、「規格適合性のガイドライン」
と題して、JIS Q 10002規格についての4~8の各箇条に沿って、組織のマネジメントシステムのJIS Q 10002規格への適合性の判断基準として以下の二つの条件が必要とし、規格への適合性のガイドラインを提示しています。
- 規格の要件を実現するために必要な規定を文書化して制定していること
- 文書化された規定通りに業務を運用していること
また適合性のガイドラインについて以下の要領でガイドラインの解説が「4.基本原則」(4.1一般)から「8.維持及び改善」(8.7 継続的改善)まで進められています。
-
規格の本文(枠囲みで全文掲載、但し、括り毎に分割、またJISが追加分はアンダーライン表記)
-
適合性の条件(規格に適合するための要件毎に必要な条件を○中文字で箇条書きで記載)
- 運用上のポイント(適合性の条件を理解するためのポイントを解説、条件を理解するための例示も記載)
本章が本書の中核になっています。
第4章では、「JIS Q 10002に関するQ&A」
と題して、ACAP主催の過去の講習会で話題になったという以下の8件の質問と回答のQ&Aが取り上げられています。
- Q1: 「自己適合宣言」すると、どんなメリットがあるのか?
- Q2: これまで、どういった企業が「自己適合宣言」をしているか?
- Q3: 「自己適合宣言」とは何を宣言することか?
- Q4: 自己適合宣言書とは、どのような内容を書けばよいか?
- Q5: 宣言することにより対外的に負担になるのでは?
- Q6: 宣言の準備や宣言後の業務量が増えるのでは?
- Q7: どこまでのレベルであれば宣言に向かって取り組めるのか?
- Q8: 導入には莫大な経費がかかるのではないか?
具体的で分かり易い回答が掲載されています。
第5章では、「海外におけるISO 10002の普及状況」
と題して、現在、EUをはじめ各国でISO 10002が国家規格として採用されているとし、ここでは、韓国、オーストラリア、イギリスの例を事例を紹介しています。
第6章では、「自己適合宣言企業の事例」
と題して、実際にJIS Q 10002 の自己適合宣言を行った企業のマネジメントシステム構築及び自己適合宣言の事例について5社の関係者の座談会形式で「構築の体制や苦労した点」、「PDCAサイクルの回し方」、「自己適合宣言のメリット」といった事項を中心に2009年3月4日に実施された内容が紹介されています。
5社の企業の方の生の声がまとめられてあり、参考になります。
<<ISO 10002:2004(JIS Q 10002:2005)関連の書籍>>
ISOの本棚で紹介した以下のISO 10002関連の書籍がありますのでご参照下さい。
また以下の関連書籍もあります。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、JIS Q 10002:2005 規格に基づく苦情対応のマネジメントシステムの規格の解説にはじまりシステム構築の手順から自己適合宣言の方法までを分かり易く解説しています。
<<まとめ>>
苦情対応のマネジメントシステムを構築して顧客の信頼・社内の能力を高め社内体制強化を実現するとの観点からJIS Q 10002:2005 規格に基づく苦情対応のマネジメントシステムに関心があるビジネスパースンには、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 JIS Q 10002の全体像とその背景
1.1 JIS Q 10002について
1.2 JIS Q 10002の目的
1.3 消費者対応部門の役割
1.4 なぜ、マネジメントシステムでなければならないか
1.5 JIS Q 10002の特徴
1.6 JIS Q 10002自己適合宣言によるメリット
1.7 JIS Q 10002が第三者認証型でない理由
1.8 苦情対応プロセスの導入手順
第2章 JIS Q 10002の概要
2.1 JIS Q 10002の目次(構成内容)とPDCAサイクル
2.2 各箇条における概要
第3章 規格適合性のガイドライン
3.1 ガイドラインの位置付け
3.2 ガイドラインの構成
3.3 適合性の考え方
3.4 「4.基本原則」の適合ガイドライン
3.5 「5.苦情対応の枠組み」の適合ガイドライン
3.6 「6.計画及び設計」の適合ガイドライン
3.7 「7.苦情対応プロセスの実施」の適合ガイドライン
3.8 「8.維持及び改善」の適合ガイドライン
第4章 JIS Q 10002に関するQ&A
Q1: 「自己適合宣言」すると、どんなメリットがあるのか?
Q2: これまで、どういった企業が「自己適合宣言」をしているか?
Q3: 「自己適合宣言」とは何を宣言することか?
Q4: 自己適合宣言書とは、どのような内容を書けばよいか?
Q5: 宣言することにより対外的に負担になるのでは?
Q6: 宣言の準備や宣言後の業務量が増えるのでは?
Q7: どこまでのレベルであれば宣言に向かって取り組めるのか?
Q8: 導入には莫大な経費がかかるのではないか?
第5章 海外におけるISO 10002の普及状況
5.1 韓国
5.2 オーストラリア
5.3 イギリス
第6章 自己適合宣言企業の事例
6.1 座談会の概要
6.2 はじめに
6.3 自己適合宣言に関する実務
6.4 苦労点 その1
6.5 苦労点 その2
6.6 構築・導入のポイントとメリット・デメリット
6.7 宣言後の運用、内部監査
6.8 今後の課題
6.9 これから取り組む企業にアドバイス
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