ISO/IEC 17025:2005(JISQ17025:2005、「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」)規格に対応して、校正や試験における組織・機関・システムの認定の仕組みから、人の技量さらには製品の認証に通じる適合性評価の基本原理と国際ルール、その考え方・使い方、国際的な取組みの現状、更には、基本的・共通的に要求される計量標準や標準物質の国際的な位置づけなどを分かり易く解説している本を紹介します。
本書:「ISO/IEC17025に対応した適合性評価と計量のトレーサビリティ」です。
本書は、今井 秀孝氏編著にて、2007年3月に日本規格協会より発行されています。
本書の編集及び執筆は、(独)製品評価技術基盤機構・認定センター(IA.Japan)内におかれた『適合性評価のメカニズムと計量のトレーサビリティ 編集委員会』のメンバーにより行われたとのことです。
本書の帯には、以下のように書かれてあります。
ISO/IEC 17025:2005に対応
- 適合性評価と計量のトレーサビリティの
重要事項・用語をもれなく解説!
- 最新の世界動向を掲載!
本書の「まえがき」で編者は、以下のように述べています。
「ここで扱うマネジメントシステム、トレーサビリティ、不確かさ評価、適合性評価などの国際ルールや評価手法は、ISO/IECの規格やガイドがその基本として定着しており、現在の品質システム、環境監査、試験所認定、製品認証はもとより、今後の分野拡大が予測される認証標準物質、臨床検査、食品科学や安全管理においても十分に通用する共通基盤技術としてその活用が期待されています。」
特にここ数年で関連文書の改訂や文書の刊行が急速に進められたとし、以下の内容を本書に最新情報として取り込んだとしています。
- ISO/IEC17025をはじめとした適合性評価関連の主要規格
- BIPM(International Bureau of Weights and Measures:国際度量衡局)が発行する国際単位系(SI:The International Sytem of Units)文書のSI第8版。
- 国際計量用語集(VIM:International vocabulary of basic and general terms in metrology)の改訂最終原案。
- 測定不確かさ評価のガイド(GUM:Guide to the expression of uncertainty in measurement)に関連する補完文書。
- BIPMやILAK(国際試験所認定協力機構:Internatonal Laboratory Accreditation Cooperation)による国際合同委員会活動。
- 標準物質の整備に関する国際活動。
- 日本国内での適合性評価制度と計量制度に関わる国際整合化のための連携活動など。
本書は、第1章~第12章までの12の章から構成されています。
第1章では、「適合性評価制度の概要」
として、ここでは、適合性評価の役割、さらには、試験所認定制度の概要、試験所認定機関の国際組織と相互承認などの仕組みについて解説があり、校正、試験、検査などの具体的な適合性評価の方法とそのプロセスについて解説されています。
さらに計量標準へのトレーサビリティを確保するための要件やこの分野の国際的な活動状況について詳細に解説しています。
試験所認定をはじめとした適合性評価の実施体制、その基盤構築の手法やルールを解説し、ISO/IEC17025規格について、その要求事項について解説し、日本の適合性評価機関について紹介しています。
第2章では、「計量標準の背景と概要」
として、計量標準の概要をメートル条約関連と法定計量関連条約を中心に解説されています。
関連する技術分野の国際的な活動の状況について歴史的な経緯を含め、説明されています。
また、計量法を中心とした日本における計量標準の整備について解説しています。
第3章では、「計量のトレーサビリティ体系」
として、計量のトレーサビリティについての日本の現状が紹介されています。
測定のトレーサビリティとはとして、トレーサビリティの基本的な考え方について、現状の要求と歴史的な経過が解説されています。
JCSS(Japan Calibration Service System:新計量法に基づく国家的な校正制度)の制度下での個々の技術分野における校正の流れについて技術的な具備すべき要件と共に解説されています。
第4章では、「国際的相互承認の実際」
として、国際相互承認・認証制度(MRA:Matual Recognition Ararngement)の活動状況と動向、さらには関連する国際機関及び各メンバーの概要が詳しく解説されています。
第5章では、「適合性評価・計量標準関連の用語」
として、国際計量用語集(VIM)の概要が紹介され、さらにEUROMET(Europian Collaboration in Measurement Standards)が発行した「Metrology in Short:計量学早わかり」)の一部が紹介されています。上記資料は、EUROMETのサイトからダウンロードできます。
第6章では、「計量単位:国際単位系(SI)」
として、SI文書第8版の内容がその使い方情報と併せて紹介されています。
第7章では、「統計的手法の基礎」
として、適合性評価ならびに計量標準に関係した統計的検定の概念の導入、有効数字と四捨五入の考え方、実験計画法、多元配置による分散分析、標準の必要性と回帰式による校正などの基礎的な統計的手法が解説されています。
第8章では、「技能試験の実際」
として、適合性評価のいて技術能力を具体的に提示する技能試験、試験所間比較などについて解説されています。
第9章では、「測定不確かさ評価の実際」
として、測定不確かさの概念の導入とその評価方法、不確かさ評価の実践的活用、測定不確かさ評価の今後の課題などを解説しています。
第10章では、「適合性評価関連証明書」
として代表的な適合性評価分野の証明書類について、認定証、試験成績書、校正証明書から付随するデータISO/IEC17025の「結果の報告」で要求されるトレーサビリティや不確かさの内容についても解説しています。
第11章では、「役に立つ適合性評価・計量標準関連の規格・ガイド類」
として、適合性I評価に関するISOの規格やガイド類について、また関連するJISについても詳細に解説しています。また間連情報として国際組織の主要な組織のホームページのURLが掲載されています・
第12章では、「適合性評価・計量標準にかかわる余話」
として、本書の1から11章までの内容のエピソード(「余話1:SI基本単位はどのように実現されているか」から「余話25:技能試験の現状は」まで)を編者がまとめられた内容が紹介されています。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 適合性評価制度の概要
1.1 適合性評価の役割
1.2 試験所認定制度の概要
1.3 試験所認定機関の国際組織と相互承認
1.4 試験所認定の相互承認
1.5 試験所認定の国際規格・基準
1.6 日本の参画状態
1.7 アジア太平洋地域協力とAPLAC
1.8 欧州の地域協力とEA
1.9 米州での地域協力とIAAC
1.10 適合性評価分野の今後の課題
第2章 計量標準の背景と概要
2.1 計量標準の概要
2.2 メートル条約の成立とその概要
2.3 OIML関連条約
2.4 適合性評価・基準認証関連の組織
2.5 日本における計量標準の整備
第3章 計量のトレーサビリティ体系
3.1 標準供給とトレーサビリティ
3.2 日本における計量標準の供給体制
3.3 測定のトレーサビリティとは:基本的な考え方について
3.4 NITE認定センター(IAJapan)の技術文書
3.5 JCSSで確保されるトレーサビリティ:トレーサビリティ
体系図
第4章 国際的相互承認の実際
4.1 国際相互承認・認証制度の動向
4.2 国際機関及び各メンバーの概要
第5章 適合性評価・計量標準関連の用語
5.1 はじめに
5.2 測定及び計量標準に関する用語
5.3 誤差・精度・不確かさ関連の用語
5.4 適合性評価関連の用語
5.5 国際計量用語集の紹介
5.6 計量関連用語の整理
第6章 計量単位:国際単位系(SI)
SI文書第8版への緒言
第7章 統計的手法の基礎
7.1 統計的扱い方の必要性
7.2 基本的な統計量
7.3 統計的検定の概念の導入
7.4 有効数字と四捨五入の考え方
7.5 実験計画法
7.6 多元配置による分散分析
7.7 標準の必要性と回帰式による校正
第8章 技能試験の実際
8.1 はじめに
8.2 技能試験(試験所間比較)の形態,実施手順,結果の分析等
第9章 測定不確かさ評価の実際
9.1 はじめに
9.2 はかる(測・計・量)ための目的
9.3 従来の誤差評価の問題点
9.4 測定不確かさの概念の導入とその評価方法
9.5 不確かさ評価の実践的活用
9.6 測定不確かさ評価の今後の課題
9.7 まとめ
第10章 適合性評価関連証明書
10.1 はじめに
10.2 適合性評価の種類とその証明書
10.3 適合性評価証明書の具体例
第11章 役に立つ適合性評価・計量標準関連の規格・ガイド類
11.1 国際機関編集の基本文書
11.2 関連する主要なJIS
11.3 ISO/CASCO「適合性評価」関連のISO規格とJIS
11.4 主要な組織のホームページ
第12章 適合性評価・計量標準にかかわる余話
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