ISO 26000は、SR(社会的責任)に関する国際規格で、ISO/TMB WG Social Responsibilityにより作成作業が進められ,2010年9月に発行される計画となっています。
近年、世界的に企業に対する評価の視点が大きく変わってきています。
収益力や賃金の高さといったことだけでなく、環境対応、消費者目線の商品開発、不祥事を防ぐコンプライアンスの実践など、CSR(企業の社会的責任)の実践度合いが企業の評価に大きな影響をもたらすようになっています。
こういった社会的な背景がISO 26000のニーズにもなっています。
品質規格(ISO9000シリーズ)が第1世代、環境規格(ISO14000シリーズ)が第2世代、社会的責任規格(ISO 26000)が第3世代と呼ばれているようです。
2009年5月には、カナダのケベック第7回総会でCD(委員会原案)に対して提出された3000以上のコメントと投票がまとめられ、2009年10月にDIS(国際規格原案)が発行される計画になっています。
ISO 26000の特徴は、以下のような点になります。
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第三者認証に利用されることを意図してはいないガイドライン国際規格である
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持続可能な開発・発展の促進を目指し、社会及び環境問題に関連するあらゆる中核主題に対応したものである
- あらゆる種類の組織に適用されることが想定され、策定されている
ISO 26000の発行に備え、ISO 26000に盛り込まれている以下の「7つの中核主題」を柱にして企業がCSR(企業の社会的責任、ISOでは、SRとして取り上げられています)に取り組む際のガイドとして活用を意図して作成された本を紹介します。
- 組織統治
- 人権
- 労働慣行
- 環境
- 公正な事業慣行
- 消費者課題
- コミュニティ参画および開発
本書の「はじめに」で執筆者を代表して田中 宏治氏ならびに水尾 順一氏は、今日の社会的背景と本書の意図する点などについて以下のように述べています。
「近年、グローバリぜーションや情報技術の発展によって、消費者・顧客、NGOなどから、企業活動に対して厳しい目が注がれています。
また、世界的な経済不況など、企業は厳しい経済・社会環境にあります。
そこで、各企業にとっては、身の丈に合う形でどのようにCSR(企業の社会的責任)の実践に取り組むかが切実な課題となっています。
(略)そこで本書は、ISO 26000の発行に備えて、”7つの中核主題”を柱にして、企業が実践に取り組む際の実践手引き書、テキストとして使用・活用できるよう工夫し作成しました。
(略)
本書は、このように企業の一員として必ず知っておくべきCSRに関する基本事項、実践事例、基本キーワードをそれぞれの専門家が解説しています。」
<<ポイント>>
CSR(企業の社会的責任)の基本からISO 26000の、”7つの中核主題”についての実践手引きを解説している本。
本書では、
CSRの本質およびISO 26000規格の動向についての解説にはじまり、
”7つの中核主題”について51例の企業の実践事例を紹介し、
”7つの中核主題”の事例の理解に必要な80項目の基本キーワードについて、
解説しています。
本書:「ビジネスマンのためのCSRハンドブック」です。
「先進企業の事例から用語解説まで」との副題が付いています。
本書は、経営倫理実践研究センター 日本経営倫理学会CSR研究部会の著・編集にて、2009年8月にPHP研究所より「新書」として、発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス…
企業のブランド力を
高める極意がここにある!!
本書は、3部から構成されています。
緑黒の二色使いによるメリハリある構成で、イラストや概念図などの図表が挿入され、親しみやすく分かり易い内容となっています。
本書の末尾には、ISO 26000の7つの中核課題に関する『CSR実践のための「振り返りチェックリスト」』が掲載されています。
以降で本書の概要を紹介します。
第1部では、「CSRの基本」
と題して、「CSRって何?」とのタイトルではじまり、CSRの定義について、ISO 26000での定義など紹介し、CSRの概念が生まれてきた歴史と背景とを振り返り、企業にとってのCSRの位置づけの確認、CSRのもたらす効果(ISO 26000による)、CSRと企業経営との関わりについて、『CSRは、企業と社会の長期的な持続可能性に関わるものであり、CSRの導入は企業が長生きするための必須条件』としています。
また「CSRの7つの中核課題」について、ISO 26000のCDの6項で取り上げられている社会的責任の範囲を定義し、関連する課題を特定し、優先順位を設定するための7つの中核課題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画および開発)についての概要を解説しています。
さらに「どうしてCSRが必要なの?」として、CSRへの取り組みは世界的潮流になっていること、人々がCSRを求める思いについて、CSRの4つの責任(『1.独禁法や会社法、消費者基本法などの会社に関連する法律を守る「法的責任」』、『2.適正な価格や品質で商品・サービスを提供し会社本来の機能をまっとうする「経済的責任」』、『3.会社を取り巻くさまざまなステークホルダーに迷惑をかけない「倫理的責任」』、『4.文化・教育・福祉活動など社会に積極的に働きかける「社会貢献的責任」』について解説しています。
第2部では、「企業におけるCSRの実践」
と題して、我が国の企業でのそれぞれに工夫を凝らしてのCSRへの取り組みとその結果、企業の従業員や消費者、地域社会の人々など多様なステイクホルダーからどのような好意的な評価を受けたかといった51の事例について、ISO 26000の7つの中核課題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画および開発)に区分して解説しています。
第2部は、51の番号とタイトルに続き、『ねらい』について数行程度で枠囲みでまとめた後に、本文の解説が続き、最後に『CSRのツボ』としてポイントが箇条書きでまとめられるという構成になっています。
経営倫理実践研究センターの会員企業109社の制作・取材協力に基づいてまとめられたものとのことです。
- 【組織統治】については、「コンプライアンスの推進で社会の要請に応える」など5項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
- 【人権】については、「ハラスメントの撲滅で人権を守る」など5項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
- 【労働慣行】については、「長時間労働防止に従業員も意識改革」など10項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
- 【環境】については、「地球環境を守るのは企業の社会的責任」など11項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
- 【公正な事業慣行】については、「談合・カルテルを撲滅する」など6項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
- 【消費者課題】については、「製品情報の提供で消費者に安心感を」など8項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
- 【コミュニティ参画および開発】については、「少子化時代に欠かせない次世代育成」など6項目が取り上げられ企業の事例も交えて解説されています。
第3部では、「用語解説」
と題して、あいうえお順に「ILO宣言」、「アファーマティブ・アクション」、……、「労働者派遣法」といった用語について解説しています。
本書では、全社を挙げて取り組むべき課題となっているCSRの取り組みについて日本のリーディングカンパニーは、どのように取り入れ、消費者からの信頼獲得につなげているのかといった事例(「企業不祥事防止に取り組むNECのコンプライアンスの実践」、「多様な人材を活用するパナソニックの外国人採用プラン」、「ベネッセでのワークライフバランスの取り組み」、「水資源を守るため森林保全活動を行う飲料会社」、「下請け先との公正な取引を進めるオムロンの従業員教育」、「交通安全教室を行うトヨタ自動車」、「カンボジアでの学校建設事業を展開するイオン」…ほか)が満載されています。
本書は、このようなCSRの先進企業の活動事例から用語及びISO 26000の7つの中核主題の解説も含めてハンディな新書サイズで通勤時間などを利用してCSRについて学ぶのにも最適です。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、これからの時代の企業のブランド価値に関わるCSRについてのISO 26000の概要、関連キーワードなど基礎的事項と先進企業の活動事例などをイラストなどの図解を含め分かり易く解説しており、CSRについての基本的事項をしっかりと学ぶことができます。
またISO 26000の発行に備え、企業が社会的責任の実践に取り組む際の手引書・テキストとして活用できる内容になっています。
<<まとめ>>
CSRについての関心の如何に関わらずこれからの時代に企業人として知っておくべきCSRの基本の理解のためにビジネスパースンの方には、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1部 CSRの基本
1. CSRって何?
2. CSRの7つの中核主題
3. どうしてCSRが必要なの?
第2部 企業におけるCSRの実践
1. 組織統治
2. 人権
3. 労働慣行
4. 環境
5. 公正な事業慣行
6. 消費者課題
7. コミュニティ参画および開発
第3部 用語解説
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