『MOT(Management of Technology:技術経営)とは』、と題して本書の「プロローグ」で「技術をベースにした経営全体」という意味と、「技術開発活動のマネジメント」の二つの意味があるとの論から始まっています。
現場からMOTを語るとの観点から、日本を代表する経営学者の伊丹 敬之先生が東芝、ソニーの現場で研究開発トップとしてMOTを実践されてきた達人の森 健一先生、鶴島 克明先生との間でプロジェクトリーダーのMOTから、研究所長、更には、CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)のMOTまでをインタビューや座談会と通して解き明かしている本を紹介します。
本書:「MOTの達人」です。
「現場から技術経営を語る」との副題が付いています。
本書は、森 健一先生、鶴島 克明先生、伊丹 敬之先生の共著にて、2007年11月に日本経済新聞出版社より発行されています。
本書の帯には、以下のように書かれています。
「死の谷が
あるのは
健康な
証拠だ!
個別プロジェクトの運営から
全社的研究開発戦略まで
すべての局面を
戦い抜いてきた達人が
はじめて明かす技術経営の神髄。
教科書を
超えた知恵
が満載。」
本書は、7章から構成されています。各章の終わりに伊丹先生によりその章の議論のエッセンスが総括されています。
第1章では、「日本語ワープロ開発のMOT」、第2章では、「CD開発のMOT」として、ゼロからの困難な出発であったこれらのプロジェクトがどのような契機からスタートに至ったか、さらにどのようなステップを経て成功したといった経緯についてどのようなものであったかについて、マネジメント視点から語られています。
次にプロジェクトリーダーのMOTとしての論点について、第3章の「研究テーマを決める」から、第4章の「開発プロセスのマネジメント」、さらに第5章の「死の谷のマネジメント」の各章において、研究開発のテーマの決め方、決まり方から、プロジェクトの運用に関わるプロジェクトリーダーとしてのプロセスマネジメント、さらには、開発が進んだ後の事業化に向けての大きなハードルの死の谷をどのようにマネジメントしていくかといった内容が論じされます。
さらに第6章では、「研究所長は嗅覚、哲学、ネアカ」として、複数のプロジェクトを抱えた研究所長としてのMOTについての議論が展開されています。先の5章でも研究所長が死の谷のマネジメントでやじろべえのバランスを取るなどプロジェクトリーダーと研究所長との関わりも論じられています。
第7章では、「技術を経営の中心に」として、CTO:最高技術責任者の立場から技術を経営の中心に据えるためにはどうすべきかとの論点で議論が展開されています。
実践的なMOTの視点で、プロジェクトリーダーからCTOまでのなるほどと共感される部分からそうかとの新たな気づきの部分まで興味深く、説得力ある技術開発のマネジメントが論じられていて、勉強になります。
なお本書の目次は、以下の内容です。
プロローグ 技術経営(MOT)とは何か
第1章 日本語ワープロ開発のMOT
第2章 CD開発のMOT
第3章 研究テーマを決める
第4章 開発プロセスのマネジメント
第5章 死の谷のマネジメント
第6章 研究所長は嗅覚、哲学、ネアカ
第7章 技術を経営の中心に
あとがき
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