本書のタイトルとなっているクリスタルボールは、占い師が使う水晶の玉に由来する。


辞書によれば、


crystal-ball:a clear glass ball used by people who claim they can predict what will happen in the future by looking into it:

(それをのぞき込んで未来に起こることが分かるとする人々(占い師)が用いる透明なガラスのボール)


未来を確実に知ることができるこんなクリスタルボールがあれば、何ごともうまくいくだろうが、実際にはそうはいかない。


TOC(Theory of Constraints:制約の理論)のエリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)氏の今回のテーマが「在庫を大幅に減らしながら、利益を上げる」ということを説く、小売業についてのビジネス小説。


ベッドシーツ、羽毛布団、テーブルクロス、エプロン、キッチンタオル、カーテン、カーペットといった類のテキスタイル商品を扱う「ハンナズショップ」というチェーン店のボカラトン店が舞台で、売上げ不振に悩む店長が主人公になっています。


この小説では、


水晶玉(クリスタルボール)は、


  • 売れ残るリスクを抱えても在庫を持つべきか、
  • それとも売上が落ちるリスクがあっても在庫を減らすべきか

という二律背反的なジレンマの問題について、客が何を買うのか、どんな商品を用意しておいたらよいのかを教えてくれる魔法の象徴として本書の小説の冒頭に登場しています。


<<ポイント>>


在庫を大幅に減らしながら、利益を上げる」という切り口から、TOC(制約の理論)に基づくサプライチェーンの全体最適への展開を説くビジネス小説。


本書では、


主人公の売上げ不振に悩む店長のポールを巡ってストーリーが展開されていきます。


ついに地域のチェーン10店舗のうち、利益率で8位にまでランクを下げてしまったところから始まります。


そして、ショッピングモールの水道管が破裂し、地下倉庫が水浸しになるという緊急事態が発生します。


20日分の在庫のみを残し、残りは地域倉庫に戻すという苦肉の策をとるという状況でなんとか回転させていかざるを得ないという状況のなか、予期せぬ結果が、売上が増え、地域での利益率トップに


…と物語が展開していきます。


このような偶然に掴んだ成功を分析して確たるビジネス活動にしていくという展開のなかで、一店舗の部分最適化がサプライチェーンの全体最適にといったTOCに基づく、サプライチェーンの全体最適の問題解決のロジックが説かれていきます


本書:「ザ・クリスタルボール」です。


売上げと在庫のジレンマを解決する!」との副題が付いています。


本書は、エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)の原著:『Isn't It Obvios』についての岸良裕司氏の監修、ならびに三本木亮氏の翻訳にて、2009年11月にダイヤモンド社より発行されています。



<<本書のエッセンスの一部>>


本書の帯には、以下のように書かれています。


今度のゴールドラットは、読み出したら止まらない!

売れ残るリスクを取るか!?

売り逃すリスクを取るか!?

在庫を大幅に減らしながら、利益を上げる

-----ゴールドラット博士が小売りの常識を覆す!


本書は、以下の6つのパートからなります。


  • 魔法のクリスタルボール
  • 緊急事態発生
  • 予期せぬ知らせ
  • 渦巻く疑念
  • 説得工作
  • 次なる戦略

本書に寄せられている評価を見ると珍しく大きく見方が分かれています。


このように好き嫌いのようなものがハッキリと分かれているのは、本書が個性的でメッセッジ性の大きな内容に仕上がっている証拠とも言えるかと思います。


「在庫を大幅に減らしながら、利益を上げる」という問いに対するTOC理論の展開が興味深い物語を通して主人公の継続的な進化と共に学ぶことができるようになっています。


本書で交わされている会話の一端を紹介します。


モールの地下倉庫においてあった商品在庫のうち、いったいどれだけが、本来、店内においておくべき商品だったのか、逆に、店内に置いてあった商品のうち、いったいどれだけ地下の倉庫に置いておくべき商品だったのかということだ。

「みんなが切りのいい数字にまとめているのに、彼女は、1個単位で細かいオーダーを出している。」
「どうやってオーダーする量を決めたんだ」
「どれだけ在庫が減っているかを数えて、20日分の在庫量から引いただけです。」

「そうだなあ売上は増えたよ、それから、店の中の在庫がずいぶんと減ったから…、実は必要以上に減らしすぎたんだけれどね、そのおかげで、ディスプレーも良くなった。ディスプレーが良くなるだけで、そんなに売上が増えるものなのかな?」
(略)
「店に来るお客さんの数は増えて前と変わらないのに、毎日、売上は20~30%も増えているんだ。」

ポールはコンピュータシステムを使って、彼の店で扱っている全SKU(Stock Keeping Unit:最小管理単位)のうち、1月中にどれだけのSKUに品切れが発生したかを調べてみた。そして、品切れが発生したSKUが2月どれだけ売れたかを調べてみた。その結果、これらのSKUからの売上が、概ね売上高の増加分に一致していることが分かった。

「他の地域倉庫から、在庫を回してもらうわけにはいかないだろうか。地域倉庫は他に9箇所ある。9つも倉庫があれば、君の倉庫で在庫が底をついたSKUでも、他の倉庫の1箇所や2箇所くらい、在庫を多く抱えているところもあると思うし、それほどでもないにしても半端な数の在庫くらい、どこの倉庫にもあると思う。だから、クロスシッピングをして貰えないだろうか。」

「任意に在庫を減らしたりはしない。決めたルールに従ってシステマチックに在庫を調整するんだ。在庫を減らすのは、過度な余剰在庫だけ。そうすれば、みんなの不安も解消することができるんじゃないだろうか。」

取引を交わしてから、キャロラインはもう一つ大切なことに気付いた。取引相手のグプタがとても喜んでいることだった。キャシュフローが改善され、出荷もすこしずつで扱いやすくなったのだから、当然だ。取引を交わして走法が本当に満足することなどそう頻繁にはないことだった。他のサプライヤーはどうだろうか。グプタと同じように協力してくれるだろうか。


<<本書で何が学べるか?>>


トヨタ生産方式のあのJITジャストインタイム)の考え方は、大野耐一氏がスーパーマーケットの在庫管理の考え方から発想したものとのことです。

トヨタも現況では、海外でアクセル部品のリコール問題で苦境にありますが、これを一致して乗り切り、災い転じて福となすにして欲しいものです。

スーパーマーケットの在庫管理の考え方は、以前からあったとしても、それを分かり易く説くことはなかなか大変なこととと思います。


本書は、小説のストーリーを楽しみながら小売業に関わる「在庫を大幅に減らしながら、利益を上げる」といったジレンマ或いは、トリレンマの問題の全体最適を図るというTOC手法の考え方を学ぶことができるお得感のある一冊と思います


<<まとめ>>


TOC手法に関心のある方は勿論、ゼネラリスト的な経営者を目指す人は、本書を読んで見て下さい


なお本書の目次は、以下の内容です。
1. 魔法のクリスタルボール
2. 緊急事態発生
3. 予期せぬ知らせ
4. 渦巻く疑念
5. 説得工作
6. 次なる戦略
エピローグ
解説(岸良裕司)


<<TOC手法に関する本>>


以下のようなゴールドラット氏の著作も含むTOC手法の解説書があります。


ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か


1680円

機械メーカーの工場長である主人公のアレックス・ロゴを中心に繰り広げられる工場の業務改善プロセスを主題にした小説。通常、アメリカでベストセラーとなったビジネス書は、すぐに日本語に翻訳されるものだが
ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス


1680円

自分が実務者なので今作で主題となっている企業経営に関してあまり実感を受ける内容が多くなかったです。
内容は理解できるのですが、実際周囲を見回してそれを生かせる状況を思いつきませんでした。
チェンジ・ザ・ルール!


1680円

ベストセラー『ザ・ゴール』の第3弾。2作目までの主人公、アレックス・ロゴは登場せず、まったく新しいストーリーとなっているが、優れた経済小説を書き続ける著者の手腕は、今回もいかんなく発揮されている
クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?


1680円

ベストセラー『ザ・ゴール』に続くゴールドラット博士によるシリーズ待望の4作目。テーマはTOCによるプロジェクトマネジメントである。

???本書でも一連の作品と同様に、既存の手法が通じない経

「よかれ」の思い込みが、会社をダメにする―飛躍的成長を実現する全体最適のマネジメント


1680円

よかれを思ってやったことが、何の役にも立たないどころか、悪いことを引き起こす。
・コストを下げようとたくさんつくると、過剰在庫で「あの世行き」
・現場の効率を上げようとすると、
ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!


1680円

ゴールドラット博士は、この本で科学者のような論理的で明晰な思考をするための障害となるものとして以下のようなことを挙げています。
(1)ものごとを複雑に考えすぎる。(複雑な方が凄いと考える)
ザ・キャッシュマシーン


1680円

問題を抱える業務プロセスの中から、原因と結果の因果関係から失敗の原因を探し出してつぎつぎと改善していくTOCの手法が、今度は営業のプロセスもカイゼンします。

 TOCはつまり
エリヤフ・ゴールドラットの「制約理論」がわかる本 ポケット図解 (Shuwasystem Business Guide Book)


630円

制約理論について軽く復習するつもりで購入したが、大変分かりやすい一冊であった。

図が多く体系的に理解できるものである。

小さい本で持ち運びできるので、通
ゴールドラット博士のコストに縛られるな! 利益を最大化するTOC意思決定プロセス


1890円

著者の『ザ・ゴール』シリーズをまとめたような非常に内容の濃い一冊です。

 TOCの考え方を丁寧に解説し、それを実現するためのコンピュータ・システムの設計について考察しておりま
二大博士から経営を学ぶ―デミングの知恵、ゴールドラットの理論


1470円

日本の品質管理の父デミング博士と、TOC(theory of constraints,制約理論)を生み出したゴールドラット博士、二人の理論を元に「組織の継続的改善」のためのステップを示した本です。本書

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エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)博士の5年ぶりの著作になります。


すでに一世をした風靡したTOC(Theory of Constraints:制約理論)ですが、本書では、組織全体や個人の人生をターゲットとして、制約となっている問題のボトルネックを見つけ出し、全体最適を図るマネジメント手法の思想・哲学の本質部分をゴールドラット博士と娘のエフラットとの会話を中心とした物語を通じて解き明かしています


ちなみにエリヤフ・ゴールドラット博士は、イスラエルの物理学者で『ザ・ゴール』で説明した生産管理の手法をTOC(Theory of Constraints:制約理論)と名づけ、その研究や教育を推進する研究所を設立。


さらにその後、TOCを単なる生産管理の理論から、新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、アメリカの生産管理やサプライチェーン・マネジメントに強いインパクトを与えています。


ゴールドラット博士の信念となっている以下の2点の考え方に基づき「本当に重要なものは何か」を見極めることができれば、短期間でインパクトのある成果が得られることを説いています。


  • ものごとは、そもそもシンプルである
  • 人はもともと善良である

本書では、いかにも物理学者らしい視点からのエレガントな思考の方法論が展開されていると思います。


<<ポイント>>


ゴールドラット博士のシンプルに本質に迫る問題解決の手法の哲学部分を語っています。

何が本当に重要か」を見極めることができれば、企業は、短期間でパフォーマンスの向上を成し遂げられると説き、組織、そして人生の本質についてのゴールドラット博士の哲学を解き明かすゴールドラット博士と娘のエフラットとの会話を中心とした物語が展開されています。


本書:「ザ・チョイス」です。


複雑さに惑わされるな!」との副題が付いています。


本書は、エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)の日米同時発売の「The Choice」の日本語版で、岸良 裕司 氏の監修、ならびに三本木 亮 氏の翻訳にて、2008年11月にダイヤモンド社より発行されています。


ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!
ダイヤモンド社
岸良 裕司(監修)三本木 亮(翻訳)
発売日:2008-11-08
発送時期:通常24時間以内に発送
ランキング:2
おすすめ度:4.5
おすすめ度4 五年ぶりの著者
おすすめ度5 本質を見抜く訓練をしてくれる「脳トレ」の本!
おすすめ度5 軽く読めるけれども、深く考えたい人向け

<<本書のエッセンスの一部>>


本書の帯ならびに表紙カバーの折り返し部には、以下のように書かれています。


ゴールドラット博士の『ザ・ゴール』シリーズ5年ぶりの最新刊!

何が本当に重要か」を見極めることができれば、短期間に、企業は著しいパフォーマンスの向上を成り遂げることができる。

本当に重要なものをだけを見極めろ!

今日の企業は、高度に複雑化している。だが、複雑なシステムの中でも、本当に重要なことはいくつもない。「何が本当に重要か」を見極めることができれば、短期間に企業は著しいパフォーマンスの向上を成し遂げることができる。
本書では、ゴールドラット博士と娘のエフラットとの会話を通じ、「ものごとはそもそもシンプルである」「人はもともと善良である」という二つの信念の根本的なあり方を説明することで、あらためて深遠な思考に基づいたアプローチを提唱している。


心理学者の娘のエフラット・ゴールドラットが父のゴールドラット博士とのやりとりを語る物語の展開の中でゴールドラット博士のレポート等が紹介され、企業のあるいは、人生における問題解決において問題の本質を深く理解するための考え方・視点・アプローチ・思考法・哲学といったことが解き明かされていく構成になっています。


本書は、本書のタイトルの背景となっている問題を前にしての二つの選択肢


  1. 環境のせいにして、結果に対して不平をもらす
  2. 本当に深く理解し、何をどう修正しなければならないのか、その結果から新たな知識を獲得する(本書で解説している方法論)

言い替えれば「複雑さに惑わされるか、されないか」について例えて提起している第1章の「 二つの選択肢」に始まり、充実した有意義な人生をおくるために自分自身の選択に責任を持つべきと述べ、本書の以下のようなエッセンス部分を改めてまとめて語っている第18章の「感情、直感、そしてロジック」までの構成となっています。


  1. 人は善良である。

  2. 対立は全て取り除くことができる。

  3. どんなに複雑に見える状況も実は極めてシンプルである。

  4. どんな状況でも著しく改善することができる。限界なんてない。

  5. どんな人でも充実した人生を達成することができる。

  6. 常にウイン−ウインのソリュションがある。

ビッグブランド社というアパレルメーカーの収益の大幅な改善につながる在庫を大幅に削減しながら、品切れを解消し、さらに顧客が選択できる品揃えを大幅に拡大していく取り組みでの2か月のリードタイムを一週間未満にしたり、在庫回転数を現在の6回から15回へ 下請け企業の売上げを飛躍的に伸ばすと同時にマージンも倍増するといった取り組みのバックボーンとなった考え方。


製パン工場で、24時間の生産サイクルを8時間に短縮、生産する品種を大幅に拡大することで、数か月で100%以上の売上げ増加達成というソリューションを得るに至った販売期間の短い製品を対象とした課題の解決事例。


インドの国内でFMCG(fast-moving consumer goods:日常的に消費され購入サイクルの早い商品)を会社で、外部購入に頼っていたキーになる部品を、特に大きな投資を要することなく、導入数か月で内製化、さらに外販を開始し、5か月以内に売上高10%増加、その後さらに前年比で売上高30%増を達成、利益率が6%から20%へと改善した事例。


など説得力に富んだ事例が物理学者らしい明快でエレガントなスタイルで解説されています。

例えば、供給者−メーカー−ディストリビューター−小売店−ユーザーといった関わりのなかで、品切れ、在庫、回転率、顧客のベネフィットなどの多数の要因の同時最適化といった種類の問題を取り扱いながら、自然現象の理論説明に物理学者が多元方程式を立てて境界条件を入れて解析的にソリューションを得るといった展開で、顧客も含めてサプライチェーンのいずれもが満足し、各企業のパフォーマンスを改善するといった手際の良さで問題解決を図っていきます。

問題解決を図る際の初期条件なり、境界条件が本書で一環して説いている上の「人は善良である」にはじまる6つの視点であると説いているように感じます。

<<本書で何が学べるか?>>


何が本当に重要か」を見極めることができれば、短期間に、企業は著しいパフォーマンスの向上を成り遂げることができるとの企業や人生の問題解決のTOC理論の基礎となる考え方を心理学者の娘のエフラット・ゴールドラットが父のゴールドラット博士の問題解決に向けてのロジックやアプローチをやりとりを通して理解していく展開の中から学ぶことができる構成になっています。


エリヤフ・ゴールドラット博士の物理学者らしい哲学部分が明快に語られているストーリーとなっています。


<<まとめ>>


ものごとはシンプルである」「人は善良である」というエリヤフ・ゴールドラット博士の信念が企業や人生の問題解決の方法論のなかで語られています


なお本書の目次は以下の内容です。
本書について   ラリー・ガッド
日本語版への序文   エリヤフ・ゴールドラット
愛するエフラットへ
第1章  二つの選択肢
第2章 〈ゴールドラット・レポート〉あらためて、常識とは何か
第3章 なぜ、当たり前のことができないのか
第4章  ものごとは、そもそもシンプルである
第5章  矛盾と対立
第6章  信念を行動に
第7章 調和
第8章 〈ゴールドラット・レポート〉決して、わかったつもりになるな(Part1)
第9章  ウィン‐ウィン
第10章 〈ゴールドラット・レポート〉決して、わかったつもりになるな(Part2)
第11章  機会はいくらでもある
第12章 〈ゴールドラット・レポート〉販売期間の短い製品
第13章  限界なき可能性
第14章  明晰な思考とトートロジー
第15章 〈ゴールドラット・レポート〉コンフォートゾーン(Part1)
第16章  人はもともと善良である
第17章 〈ゴールドラット・レポート〉コンフォートゾーン(Part2)
第18章  感情、直感、そしてロジック
付章  フリーダム・オブ・チョイス
解説   岸良裕司






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現在、TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)の普及活動を図るゴールドラット・コンサルティング・ディレクターで、日本TOC推進協議会理事でもあり、『マネジメント改革の工程表』(「ISOの本棚」でも紹介)、『目標を突破する実践プロジェクトマネジメント』『三方良しの公共事業改革』『出張直前一夜漬けのビジネス英会話』などの著作でも知られる岸良 裕司 氏がTOCの「思考プロセスTP :Thinking Process)について、「『考える力』を鍛える道具」であり、問題の根本から解決するものと分かり易く解説している本を紹介します


この「思考プロセス」は、生産管理、プロジェクトマネジメント、サプライチェーンマネジメント、セールス、マーケティング、教育、会計、全体最適の組織変革などのさまざまなTOCの手法を生み出したコアの考え方になります。


本書の帯にもありますが、以下のように説いています。


問題は、分解してはいけなかった!」とし、


これまで多くの問題解決手法が、問題と言われている症状そのものをその各要素に分解・分析して解決策を考察してきている。


しかしながら、、往々にして、結果的に、構成要素にとらわれてしまって、全体との関連を見失いがちになり、気がつくと「木を見て森を見ず」の解決策に陥りかねない。


実は、さまざまな問題をつなぎ合わせると、ほんとうの問題の姿が見えてくる。


全体最適で、問題の根本から解決する「木を見て森も見る」強力な思考プロセスをわかりやすく解説しています。


<<ポイント>>


「木を見て森も見る」TOC思考プロセス(TP)のかみ砕いた解説書


全般的にシンプルで分かり易く構成されています。また親しみやすい「変える」の象徴の「蛙:かえる」のイラストも交えてカラフルな図解で見るだけで「思考プロセス」の考え方が理解できるように配慮されています。


とはいってもTOCの最新の手法も織り込まれ、とくに全体最適の変革を組織のあらゆる階層で調和をもっていかに進めるかのバイアブル・ビジョンに関わる具体的な方法である「戦略と戦術のツリー(S&T ツリー:Strategy & Technics Tree)」なども詳解しています


本書:「全体最適の問題解決入門」です。


「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!」との副題が付いています。


本書は、著者:岸良 裕司 氏(イラスト:きしらまゆこ さん)にて、2008年8月にダイヤモンド社 より発行されています。


全体最適の問題解決入門―「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!
ダイヤモンド社
きしらまゆこ(イラスト)
発売日:2008-08-01
発送時期:通常24時間以内に発送
ランキング:164
おすすめ度:5.0
おすすめ度5 わかりやすいです
おすすめ度5 TOC思考プロセスを明快に説明した良書
おすすめ度5 TOCのガッツ(真髄、中身、本質、重要部分)をもれなく、やさしく解説したよい本
おすすめ度5 TOCの総合学習本
おすすめ度5 単純ということ シンプル イズ ベスト!

<<本書のエッセンスの一部>>


本書の表紙カバーの折返し部には、以下のように書かれてあります・


対立・課題なんでもこい!

さまざまな問題をつなぎ合わせると、ほんとうの問題の姿が見えてくる。全体最適で、問題の根本から解決する「思考プロセス」をわかりやすく解説。

  • みんなが納得する「対立解消術
  • つなげて見える「現状把握術
  • 逆転発想でつくる「未来構想術
  • 中間目標に集中する「目標達成術
  • 先を読む力を鍛える「実行手順立案術
  • 全体最適でみんなをつなぐ「戦略戦術実践術

望ましくない現象を逆手にとって、望ましい状況をつくり出そう。問題こそ、飛躍のチャンスだ!


本書の表紙カバーの裏面に「全体最適の「問題解決の森」MAP」が掲載され、本書で解説している5つのツリー(「対立解消ツリー」、「現状把握ツリー」、「未来構想ツリー」、「目標達成ツリー」、「実行手順立案ツリー」)の役割が紹介されています。


本書は、7章から構成されています。カラフルな概念図やイラストなどの図表が多数、挿入されていて見てわかる解説となっています。


本書のざっとした構成を概観します。


第1章では、「部分最適のワナに陥るな!」(−ようこそ、全体最適の「問題解決の森」へ)として、目標と現実のギャップの認識が問題との提起からはじまり、部分最適の「たこつぼ現場」といった状況に陥らずにみんなが助け合って活動できるような全体最適の考え方の重要性について確認し、「つながり」に着目して因果関係を視覚的に整理してシンプルに解決する「思考プロセス」のアプローチが全体最適につながると説いています。


以降の2章から6章までこの5つのツリー(「対立解消ツリー」、「現状把握ツリー」、「未来構想ツリー」、「目標達成ツリー」、「実行手順立案ツリー」)について術として解説が進められます。


例えば、第2章では、「モヤモヤすっきり!」(−みんなが納得する「対立解消術」)として、「変える」とは何かではじまり、「1.何を変えるか?」、「2.何に変えるか?」、「3.どのように変えるか?」とのTOCの因果関係のロジックによる思考プロセスのステップに触れ、人間の変化に対する6つの抵抗の解消のためどのようなロジックのもと変革を進めるかなどクラウドの中の3つの対立」と、岸良氏が「相・自・時・妙」と呼ぶ「4つの((1)相手の要望尊重法、(2)自分の要望尊重法、(3)時と場合によって法、(4)妙案ひらめき法)対立解消術」といった雲(対立解消図)の解説を軸に「対立解消術」について分かり易く解説しています。


第3章では、全体像を把握するための「現状把握術」、第4章では、 望ましくない現象を逆手に取る「未来構想術」、第5章では、障害にとらわれないための「目標達成術」、第6章では、備えあれば憂いなしとする「実行手順立案術」がそれぞれ詳解されています。


第7章では、「理想は実現する!」(−全体最適でみんなをつなぐ「戦略戦術実践術」)として、高い目標を掲げることの重要性にはじまり、安定と成長とをつなぎ支える人の重要性、さらに組織のトップから現場までをつなぐ戦略と戦術のツリーに関わる十分な説明の必要性などを説いています。さらにTOCの「繁栄しつづける組織」という理想を実現するコンセプト(バイアブル・ビジョン)をどのように創造していくかといった戦略戦術実践の考え方を説いています。


<<本書で何が学べるか?>>


本書では、TOCの中核となっている問題解決手法としての「思考プロセス」について、著者の独自の表現を多数織り込んで、これまで多くの問題解決手法が、問題と言われている症状だけを分析し、細分化して解決策を探っていた。その結果、全体との関連を見失い、「たこつぼ組織」がつくられていた。さまざまな問題をつなぎ合わせてこそ、ほんとうの問題が根本から解決できるのだ。として「思考プロセス」による5つのツリーや問題解決の考え方を「木を見て森も見る」思考プロセスと分かり易く説いています。


<<まとめ>>


本書の「まえがき」でゴルドラット博士の多様に展開されているTOC手法の根幹となる以下の2つの強い信念が紹介されています。


  1. 人はもともと善良である
  2. 本来、ものごとは単純である

いかにも物理学者らしい明快さを感じます。


「考える力」を鍛える道具としての問題解決手法としての「思考プロセス」が丁寧に分かり易く、著者独自の表現を交えて解説されています


本書は、この問題解決の創造的で建設的な思考法について関心があるビジネスパースンには、読んで頂きたい一冊です。


なお本書の目次は、以下の内容です。
まえがき
第1章 部分最適のワナに陥るな!
−ようこそ、全体最適の「問題解決の森」へ
第2章 モヤモヤすっきり!
−みんなが納得する「対立解消術」
第3章 全体像を把握せよ!
−つなげて見える「現状把握術」
第4章 望ましくない現象を逆手に取れ!
−つなげて見える「未来構想術」
第5章 障害にとらわれるな!
−中間目標に集中する「目標達成術」
第6章 備えあれば憂いなし!
−先を読む力を鍛える「実行手順立案術」
第7章 理想は実現する!
−全体最適でみんなをつなぐ「戦略戦術実践術」
あとがき






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