メディア環境などの変化によって、「マス広告」が従来のやり方では、効果が少なくなっている。
マス・マーケティングの世界は、大転換期の時代を迎えている。
とした上で、筆者は、本書の「まえがき」でマス・マーケティングの世界における「戦略PR」について以下のように述べています。
「今、消費者は、マス広告など、「広告臭がするもの」だけでは簡単には動かない。
膨大な情報をうけるなかで、疑い深く、なかなか信じてくれなくなったのである。
では、消費者はどうしたら、あなたの売りたい商品やサ−ビスに関心を持ってくれるのか。
それには、その商品やサービスが必要とされる「世論づくり」が重要なのだ。
世論は広告ではつくれない。それを可能にするのが、中立的な第三者を動かす「戦略PR」である。
限られた広告予算のなかでも、戦略PRによって広告効果を何倍にも高めることができる。
メディアやクチコミなどの第三者による世論をつくり出したうえで、消費者のココロを動かすマス広告やSPなどを展開すれば、今でも商品・サービスを広めることは十分できる。
言い換えれば、消費者にまず関心を持ってもらい、好きになってもらうことが重要だ。
まさに人間関係と同じと言える。(略)
広告が効かないと言われる時代を勝ち抜くための戦略PRとはどういうものなのか、その方法を本書で徹底的に明かしていきたい。」
<<ポイント>>
マス広告が効かなくなったといわれる時代の「戦略PR」の具体的手法の解説書。
戦略PRという視点を持って消費者と少しずつ関係を築き、好感を抱いてもらって購買やクチコミにつなげるというプル型の「消費者視点」のマーケティングに取り組んでいくための視点が戦略PRの考え方。
消費者がなかなか信じてくれない今の時代において、戦略PRを実践していくことで、消費者から信じてもらえるコミュニケーションをとれるようになっていく。
そして、その結果、売上アップやブランディングといったビジネス成果に結びつくと説いています。
本書:「「戦略PR」の仕掛け方」です。
「マス広告が効かない時代の」との副題が付いています。
本書は、著者:玉木 剛 氏にて、2009年6月にPHP研究所より「PHPビジネス新書」の一冊として発行されています。
そういうあなたの『「戦略PR」の仕掛け方』の売り込み方にこそ注目したい!
今後に期待させる一冊です。
「個人個人の真の価値観を問われる時代」に感銘
広告失速時代のブレーク・スルー考
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯ならびに表紙カバーの折り返しには、以下のように書かれています。
広告のルールは変わった!
ブームを作る仕組みも変わった!―――――→10分の1の予算で、数倍の効果を得られるPR戦略のノウハウ
世界最大級の広告代理店、
元副社長・関橋英作氏、絶賛!
「本書は閉塞感ある広告業界に風穴を開ける
だけでなく、『ではどうすればいいのか?』を
提示してくれる画期的な書だ」
本書は、5章から構成されています。
章を追ってざっと概要を紹介します。
第1章では、「なぜ、マス広告は効かなくなったのか?」
と題して、関橋英作氏へのインタビューの内容を紹介しながら、広告業界に起こっている変化を取り上げ、分析しています。
広告が効かなく、消費者が動かなくなったのは、消費者の購買行動が変化していること。
企業がマス広告の予算を見直し、PRやSP(セールスプロモーション)を中心にマーケティング予算を再配分始めたこと。
プッシュでなくプルの時代に入りつつあるのにそういった変化に対応しきれなかったといった状況などがクローズアップされています。
そして、マスコミ露出によってターゲットである消費者のココロをどのように動かし、購買行動に至ってもらうかという消費者との戦略的なコミュニケーション活動:「戦略PR」が必要不可欠と説いています。
第2章では、「「戦略PR」の時代」
と題して、マーケティング戦略をお金で枠を買うという広告の発想から有益な情報を提供し、それを取り上げてもらうという形態のPRへとシフトすることが重要と説いています。
そして『戦略PR』について、『多くの人たちが暗黙の共有をしている情報や集合意識を、さまざまなメディア露出などを通して戦略的につくり出していく。その世論の流れに乗り、商品やサービスの売上につなげる---といった一連の戦略シナリオを設計し、さまざまなチャネルで実行すること』と定義をし、商品のライフサイクルに応じて、『広告』+『戦略PR』を組み合わせるとの考え方から、PRと広告、SPをトータルにデザインすることコミュニケーションデザインの考え方と意義、戦略PRの発想法などを説いています。
ターゲットを動かし、世論を動かすための四つの戦略PR法として以下の内容を提示しその詳細を解説しています。
- 商品・サービスをトレンドに乗せて広める
- 商品・サービスの「情緒価値」広める
- 商品・サービスが解決できる「問題」を広める
- 見えないサービスを「見える化」する
第3章では、「チャネル別・PR手法成功の秘訣」
と題して、戦略PRの観点から、戦略シナリオを作成した上で、種々のチャネルにアプローチし、世論をつくり出していく具体的なPR手法について、マスコミ(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)のPR、ウエブPR(媒体、ブロガー、CGM)、インフルエンサーPR(著名人、専門家、公的権威者)、ニッチメディアPRを取り上げ、それぞれのアプローチの秘訣などを具体的に解説しています。
とくに影響力のある第三者にアプローチして共感を得て、結果として世論をつくり出すといった方法を説いています。
第4章では、「「書籍」を用いたPR手法」
と題して、戦略PRの有効な手段である「書籍の出版」を通じて影響力を及ぼす「ブックマーケティング」の手法について解説しています。
理解しておくべき出版マーケットの仕組み、出版に伴う会社への波及効果、出版について通りやすく売れる企画の立て方、編集長へのアプローチ、本の出版後のプロモーションの方法などを解説しています。
第5章では、「PRの発想で自社メディアを展開する」
と題して、戦略PRと(会社案内、小冊子、イベント、セミナー、街頭キャンペーン、ウェブ、DMなどの)自社メディアを併用して信頼感や話題をさらに高めるための方法を解説しています。
自社ホームページなどのネット環境を見直して、売上とSEO効果を向上させるための方法や小冊子でのPR手法との連動、雑誌記事風広告・DMでのPRの考え方の織り込み等を解説しています。
とくに「消費者に信じてもらい、彼らのココロを動かすコミュニケーションを心がけることが大切」と強調しています。
巻末の付録として「プレスリリースの効果的な書き方」について留意ポイント等をまとめたレクチャーが掲載されています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、マス広告が効かなくなったといわれる時代に、消費者に信じてもらい、彼らのココロを動かすコミュニケーションのための「戦略PR」の具体的な仕掛け方について分かり易く解説しています。
本書では、「中立的な第三者を動かし、メディアやクチコミなどの第三者による世論をつくり出したうえで、消費者のココロを動かすマス広告やSPなどを展開すれば、今でも商品・サービスを広めることは十分できる」と説いています。
全方位で少し総花的な印象もありますが、ロジカルに説得力を持って具体的に『戦略PR』が説かれていると思います。
<<まとめ>>
PRやマーケティングコミュニケーションに関心があるビジネスパースンには、本書は読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
第1章 なぜ、マス広告は効かなくなったのか?
「CMの帝王」に聞く、広告業界の激震
動かない消費者、効かない広告―その原因は?
マス広告一辺倒の終焉が「あなた」の問題である理由
第2章 「戦略PR」の時代
広告中心からPR中心へ、マーケティング戦略をシフトせよ
PRと広告、SPをトータルにデザインする
世の中を動かすメッセージを生み出すには?
ターゲットを動かし、世論を動かす四つの戦略PR法
第3章 チャネル別・PR手法成功の秘訣
対マスコミPR・アプローチの極意
新聞、雑誌、テレビ…媒体別アプローチの秘訣
ますます重要性が高まる対ウェブPRのアプローチ
第4章 「書籍」を用いたPR手法
成長企業は本でつくる時代に
知っておくべき出版マーケットの仕組み
通る企画、売れる企画はこう立てる
第5章 PRの発想で自社メディアを展開する
「戦略PR×自社メディア」で売上につなげる
ネット環境を見直して「売上」と「SEO効果」を手に入れる
PRの発想で、自社メディアを大メディアに変身させる
巻末付録 プレスリリースの効果的な書き方
(広告)