プロセス・コンサルテーションの手法というのは、『支援』について、あくまで対象の相手の自律を目的とし、相手が真に何を必要としているかを質問によって導き出し、一緒に答えを考えていくという筆者:エドガー・H・シャイン(MIT工科大学スローン経営大学院 名誉教授で、米国および海外の多くの組織に対して、組織文化や組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミクスに関するコンサルティングを行っている。)が生み出した方法論。
人を助けるとはどういうことか、ヘルピング(Helping)『支援という行為』の基盤にある「協力関係」の原理原則(プロセス・コンサルテーション等)を組織行動論の観点から身近な事例を通して分かり易く説いています。
またこのような支援のモデルの実践を通して、チームワークやリーダーシップ、組織の変革マネジメントの重要なポイントの理解にも容易に役立てられると説いています。
本書では、支援とは、人間関係の基本ながら、世の中には相手の役に立っていない独りよがりの支援が余りにも多いが、具体的な支援の内容に入る前に、先ずクライアントが何を求めているかを知ること。
さらには、共に考えるためのプロセス「プロセスコンサルテーション」の方が重要になるという考え方やどこからヘルピングをスタートさせるべきかといった原理原則を説いています。
とくに支援を行う人と受ける人との人間関係を築くダイナミクスを分析し理解することで効果的な信頼関係が築けると強調しています。
<<ポイント>>
どうすれば支援で人の役に立てるかの原理原則を組織行動論の観点から身近な事例を通して分かり易く説いている本。
本書では、
人を助けることの基本の意味の考察にはじまり、
人間関係、信頼関係構築の社会的な位置づけ、
成功する支援関係はどうしたら築けるかを考察し、
「問いかけ」の活用の意義、チームワーク、リーダシップの本質、
支援関係における7つの原則とコツ
といった解説を通して、
相手のイニシアティブや自律性を尊重しつつ、相手がうまく問題解決するプロセスを支える協力関係の原則・原則を説いています。
本書:「人を助けるとはどういうことか」です。
「本当の「協力関係」をつくる7つの原則」との副題が付いています。
本書は、著者:Edgar Schein(エドガー・H・シャイン)の原著:「HELPING-How to Offer,Give,and Receive Help」の金井壽宏 氏の監修ならびに金井真弓氏の翻訳にて、2009年8月に英治出版 より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
どうしたらあの人の役に立てるだろう?
あたりまえすぎて見過ごされていた「協力関係」の原理・原則を読み解く
「この最高傑作を読んだ者は誰でも必ず得るものがある」
ウォレン・ベニス
本書は、9章から構成されています。
筆者によると本書は、学問的ではなくエッセイ風のスタイルとのことだが学者らしく体系的な展開で整理されていて章の終わりに「まとめ」を配するなど分かり易く構成されています。
本書は、『人を助けるとはどういうことか』といった人に対する支援で「役に立つ支援とそうでない支援とを隔てるものは何か」といった考察にはじまり、さまざまな種類の支援があること人間関係において最初の接触から支援を生み出す関係へとどう発展させるかが大切と説いていきます。
また経済と演劇における言葉やイメージを通じて人間関係のルールとはどのようなものかを社会経済と日々の生活に関わる社会という劇場を意識することと対比して支援の状況で生じる社会的ダイナミックスについて考察しています。
日々の生活において、支援自体が社会的通貨で適切な対応がないと不均衡が生じるとの心得が大切としています。
またクライアントと支援者との関わりにおいて、人間関係のバランスが悪いため支援者、クライアントが陥りがちな罠について考察し、とくに支援関係を築くにはこのような罠を認識して避け、修復することで支援関係が築けるとしています。
そして、支援を求められた人は、専門家、医師、プロセス・コンサルタントの3つの役割から選択できる。
またどんな支援の状況もプロセス・コンサルタントの役割を果たす支援者によって始められること。
また以下のことが実行される必要があると説いています。
- 内在する支援者の無知を取り除く
- 初期段階における立場上の格差を縮める
- 認識された問題にどんな役割が最適であるかを見極める
そのためには、プロセス・コンサルタントの役割の本質は、「控え目な問いかけ」をすることとし、以下のような問いかけの形の選択など方法について具体例を挙げて説いています。
- 純粋な問いかけ
- 診断的な問いかけ
- 対決的な問いかけ
- プロセス指向型の問いかけ
どの支援関係でも社会経済や適切な役割を管理する質問を投げかけると言う役割の理解が重要と説き、慢性的な支援が必要な場合には自問することと必要に応じて役割を変えることを学ぶことが大切としています。
さらに成果をあげるためのチームワークとリーダシップ、組織の変革のマネジメントにおける支援のプロセス・コンサルタントの「控えめなリーダシップ」といった考え方の適用がそれらの根幹をなすとしています。
リーダーシップの見方として、目標設定のプロセスとその目標を達成するために他人(部下)を支援することの両方だとしています。
本書の副題にもなっている支援関係における7つの原則と18のコツというのをまとめとしています。
本書での人を助けること:支援の原則は、当たり前というか、基本的なことだが、支援の色々の場面でそれができているかとなるとなかなかできていないなあと痛感させられる内容となっています。
原著がそうなのかも知れませんが多少、言い回し等が回りくどく、すいすいとは読みにくく感じる箇所がありますが、なかなかの名著だと思います。
いろいろと考えさせられる構成になっています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、組織心理学の権威のエドガー・シャインがどうすれば、本当の意味で人の役に立てるのかとの『支援』における「協力関係」の原理原則を身近な日常の事例を交えて説いています。
<<まとめ>>
本書では、チームワーク、リーダシップ、変革のマネジメント、良き人生といった幅広い人間関係に関わる基本原則を説いているので、コンサルタント、医者、教師といった直接、支援を生業にする人は勿論、幅広いビジネスパースンに読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
1 人を助けるとはどういうことか
2 経済と演劇―人間関係における究極のルール
3 成功する支援関係とは?
4 支援の種類
5 控えめな問いかけ―支援関係を築き、維持するための鍵
6 「問いかけ」を活用する
7 チームワークの本質とは?
8 支援するリーダーと組織というクライアント
9 支援関係における7つの原則とコツ
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