地球温暖化に関するマスコミ報道や多く、これをテーマにした本も多数、出版されています。
しかしどういうわけかこの分野の本となると地球温暖化など起こっておらず、ウソ偽りであるとする論から逆に明日にもこの地球が壊れるといったやたらに危機を煽る論までの両極端に分かれています。
残念ながらこれまでのところ、科学的かつ良識的なものは少ないように思われます。
「環境、資源、エネルギーの諸問題を解決し、豊かで持続可能な社会を構築することは、人類にとっての最大の課題であるが、冷静かつ科学的に現実を理解し、それに基づいて真の持続可能な社会の健全な対策を立てる必要がある」(「まえがき」より)との観点から環境、資源、エネルギーの諸問題の本質を論じ、問題解決のための有用なコンセプトとツールを解説し、現実的な解決のための方向性を冷静に模索すべきであると論じている本を紹介します。
<<ポイント>>
「環境、資源、エネルギー、安全の諸問題について、冷静かつ科学的に現実を理解し、それに基づいて技術面を中心に真の持続可能な社会の健全な対策を立てる」
との論を良識的に語っています。
本書では、2050年に温室効果ガスの排出を50%削減するなどの実現困難な野心的な目標を立て拙速で対策を講じ、取り返しのつかない誤りを犯そうとしている現状を真摯に憂慮して、現実に立脚した準・低炭素社会へソフトランディングするための道筋について良識的に述べています。
本書:「持続可能性へ向けた 温暖化と資源問題の現実的解法」です。
本書は、著者:御園生 誠 先生にて、2008年8月に丸善 より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
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世界の温室効果ガスを今世紀前半に半減するのは非現実的。
- この前提で持続可能社会への軟着陸を考えるのが賢明。
これに関係して、「まえがき」で実現しそうもない野心的な目標を立てて、無理に実現しようとすると、問題の規模が大きいだけに甚大な被害を引き起こす可能性があるため」とし、無理なダイエットで体をこわすこともあると述べています。
また環境問題の現状について、「エネルギーや資源の供給限界と環境破壊の許容限界がすでに見えはじめ、それらの確保が危うくなってきた。このことが、いま持続性が問題になっている理由である。」との認識に立脚するスタンスを述べています。
本書のざっとした内容ですが、本書は、5章から構成されています。また途中に挿入されている「コラム」では、「コラム エセ科学(疑似科学)」といった興味深い話題が取り上げられています。
全体的に多数のデータや図表が挿入されていて読みやすく、理解がし易い工夫がされています。
第1章では、「持続性について正しい考え方をするための12か条」と題して、地球環境、資源・エネルギーなど地球と人類の持続性に関わる基本的な考え方について概観しています。ここでは、12か条として、「1.持続と循環−持続可能性とは」から「12.誤解しやすい環境問題に注意しよう」まで本書の前提となる基本のキーワードを取り上げ、明快に解説しています。
第2章では、「われわれを取り巻く状況」と題して、現代の環境問題のかっての公害問題とを隔てる特徴的な違いについての解説にはじまり、自然環境に関する基礎的知識、資源、エネルギーの現状について事実とデータに基づき解説しています。
第3章では、「問題解決のためのツール」として、持続可能性とその実現のための対策を考える上で重要なコンセプトとツールについて解説されています。ここでは、「持続可能な社会とは」、「リスク評価 安全確保のためのツール」、「ライフサイクルアセスメント(LCA) 有用性と問題点」、「対策技術の健全性と判断基準」との軸で中心となる概念と方法について、ツールを活用する上での留意事項も含めて解説しています。
第4章では、「主要な課題を見直す」として、持続性にとって主要な課題を取り上げ、その本質について考察すると共に、解決に向けての報告性について実例を挙げて詳論しています。この章が本書の最大の論点となっており、「エネルギー」、「地球温暖化の真実」、「資源」、「食糧の安全保障と環境負荷」、「グリーンケミストリーと化学物質の管理」の各課題について論じています。ご専門の触媒化学、化学環境学のご見識を交えての冷静かつ科学的に現実的なレビューが展開されていて勉強になります。
第5章では、「健全な対策を考える」として、地球温暖化対策を中心に持続可能な社会の実現に向けて必要な対策について、これまでに提案されている対策の中から取捨選択のもと時間軸を考慮した優先順序付けされ、まとめられています。また日本の農業、地域環境、生活スタイル、価値観の転換といった論点から低炭素社会へ向けて緩やかにソフトランディングする道筋が提示されています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、温室効果ガスの半減など、非現実的な数値目標をいたずらに競うのではなく、現実を正しく理解したうえで持続社会実現に向けた合理的解決策を冷静に模索すべきであるとの冷静かつ科学的な正論が展開されています。
環境、資源、エネルギー、安全の諸問題について、冷静かつ科学的に現実を理解し、それに基づいて技術面を中心に真の持続可能な社会の健全な対策の必要性と道筋を論じた良識の書であると思います。
<<まとめ>>
環境、資源、エネルギー、安全の諸問題について関心のあるビジネスパースンに是非とも読んで頂きたい良識の書です。
なお本書の概要目次は、以下の内容です。
第1章 持続性について正しい考え方をするための12か条
第2章 われわれを取り巻く状況
第3章 問題解決のためのツール
第4章 主要な課題を見直す
第5章 健全な対策を考える
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