失敗学の権威としてよく知られ、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学などを専門とする畑村 洋太郎 先生が、失敗に遭遇したときに失敗した当事者はどのようにして失敗と向き合ったらよいかなど苦境に潰されないコツを伝授している本を紹介します。
最初から失敗することを望んで行動している人はいないはずで、ほとんどの人は、自分にできることはしっかりとやっている。
それでも起こってしまうのが失敗。
失敗とは、どんなに優秀な人でも決して避けることができない宿命のようなもの。
失敗とは、「人の行動や選択の結果、その人や周囲の人の意図しない、そして望まない結果になること」だが、
失敗は、避けようとしても起こってしまうものなので、
起こってしまった失敗に対してその失敗につきあって、それでも何とか生きていくしかない。
そうなのだが、人は必ずしも大きな失敗から立ち直れるほど強くはないもの。
その一方で人には必ず「回復力」が備わっているはずで、その「回復力」を信じることができれば、時間を経てまた前進することができるということを失敗学の関わりのなかで見てきたこと。
失敗学を通じて色々な失敗を目の当たりにしてきた畑村 先生 が、失敗した当事者がどのように失敗と付き合っていけばよいのか、またどうすれば復活することができるのかというコツを伝授しています。
<<ポイント>>
失敗学の畑村先生が失敗から陥る苦境に押しつぶされずに立ち直るコツを説いている本。
人は、誰でも失敗する可能性をもっている。
しかし小さな失敗はすぐに立ち直れたとしても、大きな失敗をしてしまうと、すぐには立ち直れず、誰でも落ち込んでしまうもの。
しかし本当に大切なのは、そこからの対処の仕方にある。
失敗との付き合い方のコツがあるが、自分の「回復力」を信じ、待つことができれば、必ず壁は乗り越えられる。
と説いています。
本書:「回復力 失敗からの復活」です。
本書は、著者:畑村 洋太郎 先生にて、2009年1月に講談社より「講談社現代新書」の一冊として発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
『しまった』という気持ちが人を成長させる
苦境に潰されないちょっとしたコツを失敗学の権威が伝授!
本書は、8つの章から構成されています。
第1章の「人は誰でもうつになる」ではじまり、以降では、以下のようなテーマが2から8の各章で取り上げられています。
- 失敗で自分が潰れないためにはどう対処するか
- 失敗したときの当事者の心の動きはどのようなものか
- 失敗を認めることなどの失敗後の対処
- 失敗にまけないための対処法
- 失敗に対する事前の準備・備え
- 時代の変化と失敗の関係
- 自分の部下の失敗の後始末といった周りが失敗した時の対処方法
以上の大まかな構成ですが、いろいろのエピソードを交えて説かれています。
以下にその一部を紹介します。
うつ病態に至る代表的なパターンは、以下の三つあった。
- 「目標喪失」:大きな目標を達成した直後に無気力状態のひどいうつになるパターン。『五月病』もこの例。
- 「超えられない高い壁」:なかなか実現できそうになり大きな壁が自分の前に立ちふさがり、その前で意気消沈し、うつになっていくパターン。
- 「先が見えない」:将来の不安を感じながらうつになっていくパターン。
先生自身も一番目と三番目のうつ状態に陥った経験があるとのこと。前者のケースでは、人の持つ回復力で抜け出せた。また後者のケースでは、共同研究の医学部の先生が相談に乗ってくれた。
失敗した人や失敗のリスクを負う人を必要以上に追い込まないようにするには根本的には、失敗に対する社会の認識を変えるしかない。(略)
失敗をした人に対しては、精神的なケアを含む周囲のサポートが必要。
程度に差はあるが、失敗したときには誰でもショックを受けるし傷つく。本人は気づかないかもしれないが、直後はエネルギーが漏れてガス欠状態になっています。こういうときに失敗とちゃんと向き合い、きちんとした対応をしようとしても、よい結果は得られません。大切なのは、「人(自分)は弱い」ということを認めることです。自分が、いまはまだ失敗に立ち向かえない状態にあることを潔く受け入れて、そのうえでエネルギーが自然に回復するのを待つしかないのです。失敗した人に向かって、よく「もっと頑張れ」と声をかけたりする人がいるが、これは相手には決して励ましにはならず苦痛になっている。
失敗に立ち向かえないときに、失敗に潰されないためには、「逃げる」、「他人のせいにする」、「おいしいものを食べる」、「お酒を飲む」、「眠る」、「気晴らしをする」、「愚痴を言う」などの自分に合ったやり方でエネルギーの回復を促すこと。
失敗を評価するために絶対基準を持つことは、失敗を正しく評価するための有効な手段。とくに「物理的視点」、「経済的視点」、「社会的視点」、「倫理的視点」の4つの視点が重要。
など一端を紹介しましたが、失敗に遭遇してしまったら苦境に潰されないそこからどう立ち直るかとの具体的なコツが多くのエピソードと共に分かり易く説かれています。
<<失敗学に関する書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『失敗学』に関する本がありますのでご参照下さい。
<<本書で何が学べるか>>
本書では、失敗学の権威の畑村先生が自身の経験や失敗にまつわるエピソードを交えて以下のように説いています。
人は誰でも失敗することがある…。
しかし大きな失敗で窮地に陥った場合にも決して「失敗などで死んだりしては、いけない」。
エネルギーが低下してしまっている時は、「人は弱い」ことを認め、失敗に立ち向かえない状態を受け入れ、ひたすらエネルギーが回復するのを待つこと。
苦境に潰されない失敗と向き合い失敗からどう回復したらよいかといったちょっとしたコツなど交えて失敗からどのようにして復活していくかの回復力を説いています。
<<まとめ>>
第三者的な視点ではなく、失敗に遭遇した当事者の視点から失敗からの復活のための対処法を具体的に説いています。
人だから誰にでも起こる可能性がある失敗について、失敗を起こした当事者はそのときにどうするか、また自分の周囲に失敗した人がいたら周囲はどのように対処するのがよいかなど先生が自ら経験され体得されたノウハウを分かり易く解説しています。
失敗に対しての人への暖かさの視点が滲み出た良書です。
なお本書の目次は以下の内容です。
第1章 人は誰でもうつになる
第2章 失敗で自分が潰れないために大切なこと
第3章 失敗したら誰の身にも起こること
第4章 失敗後の対処
第5章 失敗に負けない人になる
第6章 失敗の準備をしよう
第7章 失敗も時代とともに変わる
第8章 周りが失敗したとき
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