生産管理という言葉は、JISZ 8141:2001「 生産管理用語」によると1215において以下のように定義されています。
「財・サービスの生産に関する管理活動」
備考として
1. 具体的には、所定の品質Q(quality)・原価C(cost)・数量及び納期D(delivery、due date)で生産するため、又はQ・C・Dに関する最適化を図るため、人、物、金、情報を駆使して、需要予測、生産管理、生産統制を行う手続き及びその活動。
2. 狭義には、生産工程における生産統制を意味し、工程管理ともいう。」
この生産管理をターゲットに、生産管理の上手なすすめ方など現場の実態に即して生産管理の仕事について分かり易く解説している本を紹介します。
本書の「まえがき」で筆者は、トヨタ生産方式に代表される高付加価値を生み出すモノづくりについて言及した上で、本書について以下のように述べています。
「本書は、世界に誇る我が国のモノづくりの現場が、そのような仕組みでどのようなことを行ない、企業利益の創出に貢献しているのか、筆者自身の生産活動やコンサルティング活動を通して蓄積した知識をベースに、生産管理を切り口としてわかりやすくまとめ上げたものです。」
<<ポイント>>
生産管理の実務について分かり易く解説している入門書。
本書では、
生産管理とは何なのかといった点から始まり、
生産管理の役割、各種管理、生産計画、生産統制、
生産形態と生産方式、
生産の4Mの管理、QCDの最適化、
生産管理に役立つ各種改善手法、
スリムな生産管理体質の構築
等について、日々生産と向き合っている担当者や監督者の視点から分かり易く説いています。
本書:「生産管理の仕事がわかる本」です。
「現場がわかり」「実務に役立つ」との副題が付いています。
本書は、著者:菅間 正二 氏にて、2009年6月に同文館出版より発行されています。
本書は、同じ筆者による「図解よくわかるこれからの生産管理(2003年発行)」の改訂版になります。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯ならびに表紙カバーの折り返し部には、以下のように書かれています。
Production Control
付加価値の高いモノづくりを実現する
現場はどんな仕組みでどのようなこと
を行なって利益を創出しているのか?
現場での「生産管理」の仕事の基本が
トコトンやさしく理解できる1冊!
適切な生産管理で効率的経済的な生産を実現しよう!
- 「生産管理」とは、ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源を駆使して需要予測、生産計画、生産実施、生産統制を行ないながら、生産のアウトプットである生産のQCDの最適化を図ること。
- この「生産管理」の上手なすすめ方を、現場の実務に即して解説。日々生産と向き合っている担当者や監督者を対象に、徹底的にやさしくわかりやすく教える。生産管理の入門書として、実務の手引書として必携の1冊!
本書は、10章から構成されています。
各章で6~8項目ずつ、全体で70の節があり、各節の例えば、『1. 工場とはどのようなところなのか(日常生活に必要な製品などをつくったりメンテナンスする施設)』との『タイトル』について、2~4ページで解説されるという構成になっています。
またイラストや概念図などの図表を交えての分かり易い解説文となっています。
また各ページの下部には、仕切り線を介して脚注欄が設けられ、その節のテーマに関係する重要なキーワードの解説文が掲載されるという構成になっています。
各章の終わりには、1ページを使ったColumn欄が設けてあり、『1 ティアダウンで学ぶべきこと』といったトピックスが取り上げられ解説されています。
章を追って簡単に概要を紹介します。
1章では、「そもそも生産管理とは何なのか」
と題して、工場について「変換プロセス」とする見方等にはじまり、生産とその高度化、生産を取り巻く環境の変化、生産の4M(ヒト、モノ、設備、方法)、QCDの三要素、生産管理とはどのようなものか(財やサービスをスムーズに生産するための管理活動全般)といった基本的事項を取り上げ概観しています。
2章では、「生産管理の役割」
と題して、生産管理の担う役割はどのようなものかについて解説しています。
生産管理がなぜ必要かとの必要性からその対象、利益の源泉としての位置づけを確認し、顧客の信頼を向上し、企業利益を向上させるための観点から生産管理の目的を説き、生産管理の主要な業務となる需要予測、生産計画、生産実施、生産統制の4つについて概説しています。
さらに新製品の立ち上げへの関わり、生産手配、資材の受入・保管、製品出荷の管理とSCM全体に関わる管理との関わりについて解説しています。
3章では、「生産管理の基礎となる各種管理」
と題して、生産管理の基礎となる以下の管理についてその概要から具体的な管理の内容までを解説しています。
- 工程管理
- 品質管理
- 購買管理・原価管理
- 外注管理
- 資材管理・在庫管理
- 設備管理
- レイアウト管理・物流管理
4章では、「スムーズな生産に必要な生産計画」
と題して、スムーズな生産を行うための生産計画のために何が必要かについて生産の4Mに関する詳細計画の観点や長期生産計画の観点から解説しています。
ここでは、手順計画(工程計画)と生産準備計画の立案、需要予測の方法、生産計画の立て方、とくに確実に実行できるための生産計画の立案のポイント、さらには、MRP(Material Requirments Planning):資材所要量計画、やERP(Enterprise Resources Plannig System:企業資源計画)などによる省力化の活動の最近の流れ(MRP→MRP2→ERP→メタERP)などを解説しています。
5章では、「スムーズな生産に必要な生産統制」
と題して、スムーズな生産を行うための生産統制のために何が必要かに関して、生産統制の機能、進捗管理、5S活動、目で見る管理と生産性管理、仕掛品管理と現品管理、作業管理と余力管理の推進のための方法などを解説しています。
6章では、「生産形態と生産方式」
と題して、つくり方には公式はないとした上で、効率的、経済的な生産の観点から生産形態、生産方式について解説しています。
生産形態について、生産時期、生産品種・生産量、生産指示、加工品の流れ、生産方式(ソフト面、ハード面)、レイアウト等の分類による生産形態の違い、特にライン生産方式、トヨタ生産方式:JIT生産方式と平準化方式、同期生産方式と混流生産方式、一人生産方式とセル生産方式についてその概要と特徴等について解説しています。
7章では、「生産の4Mを管理する」
と題して、生産の4M(ヒト、モノ、設備、方法)についてのそれぞれにおける効率的な管理方法のポイントから標準作業のつくり方までを解説しています。
8章では、「製品のQCDを最適化させる」
と題して、製品のQCDを最適化させるとの観点から、品質問題、コスト問題、設備停止、納期問題の未然防止、設備稼働のロスを少なくし、ラインの稼働を上げ、繰り返し生産の自動化といった活動について、その考え方と具体的な施策、方法などを解説しています。
9章では、「生産管理に役立つ各種改善手法」
と題して、生産管理に役立つ主要な改善活動について、E(eliminate:なくせないか)C(combine:一緒にできないか)R(rearrange:順序の変更はできないか)S(simplify:単純化できないか)との原則から、改善活動においてPDCAを回すこと、品質改善、TOCなどによるネック工程の改善、段取り改善の推進のポイント、IE分析などを用いての動作(作業)改善等について解説しています。
10章では、「スリムな生産管理体質を構築する」
と題して、生産管理体質を生産面、財務面共にスリムに体質化するための構築方法について解説しています。
生産性向上活動から、小ロット生産成功のポイント、生産リードタイムの短縮化の方法、7つのムダ(1.手持ちのムダ、2.つくり過ぎのムダ、3.運搬のムダ、4.加工そのもののムダ、5.在庫のムダ、6.動作のムダ、7.不良のムダ)又は、3ム(ムダ、ムラ、ムリ)の徹底排除、在庫削減法、工数低減化法、生産管理システムの標準化、IT機器活用による各種業務の効率化について解説しています。
<<本書で何が学べるか?>>
本書では、生産管理の仕事に焦点を当て、生産管理の上手なすすめ方について現場の実務に即して分かり易く解説しています。
とくに日々の生産と向き合っている担当者や監督者を対象に、現場での「生産管理」の仕事の基本と実務を体系的に集約してわかりやすく解説しています。
<<まとめ>>
本書は、生産管理の仕事に従事されている関係者に加えて、これから付加価値が高い現場モノづくりのための生産管理の基本を勉強しようとしている方には、読んで頂きたい一冊です。
なお本書の目次は、以下の内容です。
1章 そもそも生産管理とは何なのか
2章 生産管理の役割
3章 生産管理の基礎となる各種管理
4章 スムーズな生産に必要な生産計画
5章 スムーズな生産に必要な生産統制
6章 生産形態と生産方式
7章 生産の4Mを管理する
8章 製品のQCDを最適化させる
9章 生産管理に役立つ各種改善手法
10章 スリムな生産管理体質を構築する
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