ISO9001:2008(JISQ9001:2008)規格の現場視点に立脚しての実践的解説書である本書の著者:矢田 富雄氏(食品メーカーで食品の製造、品質・衛生管理などを経験、退職後はISOマネジメントシステムの審査・教育などで活躍。現在ISO9001、ISO22000の主任審査員、技術士、中小企業診断士。「ISO 22000食品安全マネジメントシステム構築・運用の手引き」(「ISOの本棚」でも紹介)などの著作がある。)は、「ISO9001の今日的意義と本書の狙い」と題した【はじめに】で筆者が審査していた組織の顧客が明示した要求事項と商取引の実際のエピソードを紹介した上で以下のように述べています。
「ISO9001が国際規格として世に出てから22年になる。
この度、第4世代の「2008年版」が発行された。
しかしながら、この「製品の品質保証」と「顧客満足の向上」を目指しているISO9001が役に立たないと喧噪されて久しい。
ISO9001は本当に役立たないのであろうか。
筆者は”NO”と言い続けてきた。
ISO9001はすばらしい規格なのである。
組織の業務改善の仕組みとしては、確かに日本のQCサークル、TQC、その発展的に展開された手法であるTQM、さらには、ZD運動、TPMまたはシックスシグマなどに比較して、その改善のスピードは大きく及ばない。)
ウサギと亀ほどに違いがある。
しかしながら、ISO9001は決して改善を”売り”にしたものではないのである。
この規格は「マネジメントシステム」と冠しているように、組織を円滑に運営していく”要素”を示したものなのである。
(略)
この度発行されたISO9001:2008は、「ISO9001規格は難解である」との世の中の声を受けて、”ISO9001:2000に対する要求事項の明確化とISO/TC176の公式な解釈を必要とするようなあいまい(曖昧)さの除去を目指した”と主張している。
その内容を見ると、大幅に”注記”を導入し、要求事項の組み替えを行い、条項(JISQ9001の解説では「箇条」という用語を使っている」の思想を整理しており、その努力が見て取れるものである。
しかしながらISO9001の事務方の限界はそこまでと推測される。
その先は、それぞれのユーザーが現場、現実を踏まえて組織運営に軸足を置かないと解釈できない部分なのである。
本書に示しているISO9001の解釈は、長い審査経験から数多くのシステムを見てきた著者が、悩みながら、電子辞書を片手に『広辞苑』を引き、『OXFORD 英英辞典』を引きながら規格、解説書を読み、熟慮して、自らの言葉で解釈し、理解してきた内容である。
途上で一つの言葉に支えてしまい、規格の解釈が先に進めなくなったことも再三再四のことであった。
そのため本書にも、その経験でつかんだ言葉の、現場、現実に測った解釈を比較的丁寧に記載した。」
<<ポイント>>
現場、現実視点からのISO9001:2008規格の実践的解説書。
筆者のISO9001主任審査員等としての長年の経験に基づいて、
ISO9001の要求事項をどのように現場で理解し、品質の維持、顧客満足に応えていくのかを、2008年版を通して現場目線に立って解説しています。
本書:「現場視点で読み解くISO9001:2008の実践的解釈」です。
本書は、著者:矢田 富雄 氏にて、2009年7月に幸書房より発行されています。
<<本書のエッセンスの一部>>
本書の帯には、以下のように書かれています。
審査員研修機関の代表取締役の平林良人氏からの推薦文の一部が掲載されています。
「推薦文より」-私から見た本書の特徴は次の通りです。
- 業務の現場、現実から見てISO9001:2008規格を解釈している
- ISO9001の本質は製品の品質保証にあるが、そのことをきちんと捉えている
- 「現状維持を図る活動」と「現状からの向上を図る改善活動」に分けて説明をしている
- 顧客満足の向上について重点を置いている
- 不適合、クレーム、是正処置、予防処置などについても多くの紙面をさいている
本書は、上記で紹介した「ISO9001の今日的意義と本書の狙い」と題した『はじめに』ならびに『推薦の言葉』に続いて、
『ISO9001をどう理解したらよいか-ISO9001の意図している内容-』
と題した序論があります。
この序論では、筆者が解釈するISO9001の意図について総括しています。
最初に「ISO9001は何のためにあるか」
として、それは、『「製品の品質保証」と「顧客満足の向上」を達成するための仕組みの提供』を確認しています。
また「ISO9001は何を求めているか」
について「品質方針」の位置づけの確認にはじまる一連のPDCAサイクルを通し、「品質マニュアル」を作成して仕組みの「カタログ」とするといったQMSの全体像について21の箇条書きにしてまとめています。
さらに「ISO9001の性格」
について以下の3点に集約できるとその根拠と詳細を論じています。
-
「製品の品質保証」及び「顧客満足の向上」を目指すものである
-
マネジメントシステムであり、組織の運営手段として、何を実施すべきかを示したものであるが、どのように実施するかは組織に任されている
- 組織運営の中心となるものであり、人にたとえると”背骨”に該当する存在である
次に本書の中心になる「ISO9001:2008(JISQ9001:2008)規格の実践的解釈」となります。
ここでは、『製品の品質保証と顧客満足の向上を目指すマネジメントシステムとプロセスアプローチ』
とのタイトルがついています。
「「序文」についての解説」の「0.1 一般」にはじまり、「8.測定分析及び改善についての解説」の「8.5.3 予防処置」に至るまでを『JISQ 9001:2008の規格の箇条の本文』を枠囲みで引用し、『解説』するという構成になっています。
解説では、箇条を主要な要求事項項目毎に分解し、その内容を解説するという展開になっています。
解説では、フロー図などの関連する図表を交えて現場的な視点から分かり易い解説となっています。
関連する図表は、とくに筆者の専門の食品関連のものが多数取り上げられています。
4.1項の「一般要求事項」の解説では、「品質とは」にはじまる各種の基本的なキーワードや考え方の解説、機能関連図、プロセス相互関連図、食品実現化プロセス関連図などを交えてのプロセスに関わる解説、「「現状維持を図る活動」と「現状からの向上を図る改善活動」の考え方」、「プロセスの運用及び管理が効果的であることの判断基準の考え方」など非常に充実した解説となっています。
また是正処置の箇所では、「不適合/クレーム/処置/是正処置/予防処置報告書」の帳票のサンプルが紹介されています。
このISO9001:2008(JISQ9001:2008)規格の実践的解釈は約140ページに及んでいます。
また「ISO9001:2000年版から2008年版への変更内容」
と題して、2000年版から2008年版への改訂に伴っての表現上の変更について、「1.ISO9001:2008はISO9001:2000と比較して基本的な変更はない。…」から「「34. 予防処置」では、2000年版での「e。予防処置において実施した活動のレビュー」が原文に「~the efective of the ~」が導入されて、2008年版では、「e)とった予防処置の有効性のレビュー」と規格が変更された」…」に至る変更内容のポイントが箇条的に解説されています。
<<ISO 9001:2008の関係書籍>>
「ISOの本棚」のブログですでに紹介した以下のような『ISO 9001:2008』に関する本がありますのでご参照下さい。
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ISO9001:2008(JIS Q9001:2008)要求事項の解説}
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ISO9001新旧規格の対照と解説
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対訳ISO9001:2008(JIS Q9001:2008) 品質マネジメントの国際規格
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新ISO9001わかりやすい解釈
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2008年版対応 ISO9001規格のここがわからない
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ISO9000入門 改訂版―2008年改正対応
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2008年改正対応 ISO 9001本審査問答集
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審査員が教えるISO9001実践導入マニュアル
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取る前に読む本ISO9001編 2008年版対応
-
ISO 9001:2008 内部監査の実際
-
ISO9001新・解体新書―2008年版対応
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図解ISO9001早わかり 2008年12月最新改訂版完全対応
-
ISO9001内部監査指摘ノウハウ集〈2008年改正対応〉
-
ISO9001内部品質監査の実務知識早わかり(改訂4版)
-
品質マネジメントシステム要求事項の解説 2008年版対応
<<本書で何が学べるか?>>
本書は、現場、現実視点からのISO9001:2008規格の実践的解説書です。
筆者のISO9001主任審査員等としての長年の経験に基づいて、ISO9001の要求事項をどのように現場で理解し、品質の維持、顧客満足に応えていくのかを、2008年版を通して現場目線に立って解説しています。
<<まとめ>>
ISO9001の有効活用に関心がある方には、読んで頂きたい一冊です。
特に食品産業のISO9001関係者にはお薦めです。
なお本書の目次は、以下の内容です。
はじめに-ISO9001の今日的意義と本書の狙い
推薦の言葉
序論:ISO9001をどう理解したらよいか-ISO9001の意図している内容-
製品の品質保証と顧客満足の向上を目指すマネジメントシステムとプロセスアプローチ
ISO9001:2008解説
ISO9001:2000年版から2008年版への変更内容
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